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ござ先輩と言われています。(株) クオリティスタートという会社をやっています。

【書評】「IT専門調停委員」が教える モメないプロジェクト管理77の鉄則

日本実業出版社の今野様より献本御礼。

「IT専門調停委員」が教える モメないプロジェクト管理77の鉄則

「IT専門調停委員」が教える モメないプロジェクト管理77の鉄則

なぜ、システム開発は必ずモメるのか? 49のトラブルから学ぶプロジェクト管理術に続く、細川氏の第2作。前作ではITシステム開発の難しさを題材に網羅的にユーザーやベンダーがプロジェクト運営で失敗してしまうポイントを挙げられておりました。いわば、入門編という位置づけですね。本作では実際にプロジェクト運営でモメてしまう所も判例を通じて論じており、いわば「実践編」という立ち位置になっています。モメてしまうポイントを先回りして、フェーズ毎にヘルスチェックをして頂いております。

本書は女性弁護士キャラは出てきません。悪しからず。

システム開発複雑系の極み

本書ではITプロジェクト運営を成功裏に導くために、77個の鉄則(チェックポイント)を掲げてこのチェックポイントをうまく抑えておかないと水が漏れるように浸水する可能性があるぞ、という警鐘を鳴らしています。

・・・77個もあるのか、というのが僕の正直な気持ちです。請負でこのリスクを背負うベンダーはよく商売ができるなと。ディフェンシブになるのが当然。転ばぬ先の杖を提供するのがプロの仕事だから当然のことだよ。転べば転ぶほど金も時間も喰っちゃう。

MosCow分析を徹底する

僕が自社の業務システムを運営している中で感じるのが、どの課題も等しく同じ重要だと考えがちな人がとても多いこと。これでは課題管理にならない。課題管理表を回覧板にしないために、WBSの粒度(更にはタスクを定義)を決めるために最も重要なのが、本書の132pで触れられているMosCow分析だと感じました。

Must その要件が実現されなければ、システムやサービスの導入目的が果たせないもの
Should その要件が実現されなうても、システムやサービスの導入目的が果たせるが、メリットが大きく損なわれるもの
Could その要件が実現されなくても、システムやサービスの導入目的が果たせるしメリットもあるけれども、実現すれば更に大きなメリットを享受できるもの
Would 現時点で議論する必要がないもの。実現の要否判断をしたところで、導入目的にもメリットにも寄与しないもの

この区分けができていれば、課題を構造的に管理できるし、どの課題を潰せば他に影響が出るのかも議論しやすいと思う。

他人に仕事を任せることに不安な方にもおすすめ

本書は最も複雑なIT系のシステム開発プロジェクトを題材にしてモメないようにヘルスチェックが出来ますので、細かく厳密に状況を俯瞰できます。本書に挙げられた基準を元に他社様に依頼した作業の管理手法を見なおせば、ご自身のお仕事の管理効率UPにも繋がります。部下を持った、パートナーと共に働く。そういったことに、ちょっとでも不安を感じた方は一読をおすすめします。

ここから本書と関係ない話

モメないプロジェクト運営をする最適な方法を教えます

非常に簡単な事です。開発をベンダーに依頼しないで自社で開発することです。これで全てのリスクは自社内だけ。僕は本気でそう思っている。日本の会社の99%は中小企業だし、中小企業が日常的に使うシステムを作るインフラは有り余っている。弊社内製システムはVPSで動かしているので、モメるのは物理的障害(プリンタ接続)ぐらいしかない・・・。中小企業のトランザクションなど年間で1万レコードあるかどうかだし。パフォーマンスの問題などまず出ない。

オーダーしたことでコントロール出来ないなら、オーダーしてはいけない。自分でExcel/Access/各種PaaSで自作すればいい。もしくはASP/SaaSを借りたっていい。いわば、自習。Access使って簡易的システムを構築する本など巷にあふれている。これがWebベースでかつインターネット上に構築して売上を取るようなサービスになると話は別だけど、事務作業の代替手段なら自習しよう。お兄さんとの約束だ。

言い方悪いけど、素人だから生兵法は怪我の元でプロに依頼して、プロに対する仕事の依頼方法がわからずに爆死すること程、愚かしいことはない。

ソフトウェアは完全にコモディティ化しており、制作するだけならいくらでも手段がある。何百万もかける予算があるなら自習期間にお金をかけたほうが、後々IT戦略を立てる時に地に足の着いたものになります。

はてブを頂くことで生まれる悲喜こもごも

突然はてブTwitterで著名人に拾われて自分のブログに大量アクセスがやってきた・・・そんな時はどうしたら良いのか問題。

最近のはてなオフ会クラスタの方からみればお前誰だよだと思いますが、不詳ござ先輩、今まで38,000弱のはてブを頂いております。乱気流に頭から突っ込んでどーゆー感じで心のバランスを取ったのかみたいな、そんな話を連々と書きます。

はじめてホッテントリに入った時のこと

「もういいじゃん・・・」っていうのが正直な感想でした。アメリカにはSIerなんて存在しない - GoTheDistanceという記事が2007年に突然ブクマ頂きまして、色んなコメントを頂きました。コメント内容云々よりも、早くこの乱気流は終わらないかな、と。色んな人に見て頂ける事自体は嬉しくても、僕には何のメリットもなかった。ブログで商売してるわけじゃないから。

「どこまで伸びるのだろうな〜、うひょひょー」という期待感は全くなく、どこまで伸びちゃうのこれっていう焦燥感しか無かったです。

アテンションの濁流でバランスを崩す

読み手に自分の意図した通りに読み取って頂けない場合は、原則として書き手の問題です。誤解を生むような書き方が悪いと考えるべき。でも、それが不特定多数だと・・・どう対処していいかわからないんですね。

頂いた大量のコメントに目を通すと、「すいません、それ違います。こういう意味です」っていうポイントが複数生まれます。色んな人が見に来てくれるので、余計気になります。訂正・追記したりはするんですけどね。またそこでDISられるのは・・という気持ちにもなります。書いた記事によっては「ここだけは曲解してほしくない」という所もあり、そこを守るように予防線を張るとその行いがバカらしくて自分で凹んだりしました。

ホッテントリに入って1番堪えたのは、不特定多数のコメントを頂き続けると自分が否定されているような感覚になったこと。あくまで記事についてのコメントなんですけれども、「この記事なんなの」と「コイツ何なの」って非常に距離が近いのです。そこから自己罪悪感というか、そういうのも生まれた。この肌感覚はホッテントリに入らないとわからないかもしれません。

情報の取捨選択は受け手の自由

その自由を阻害したり、解釈を強要することは絶対に出来ません。

はてブで頂いたコメントを見ては「なんで言わんとしていることがわかんねーかな、随分と勝手な解釈しやがって」という苛立ちを感じていた頃もございましたが、この行いが天に唾を吐くのと同意だと気づいたら気が楽になりました。

そういう気持ちになると「この記事で伝えたいことはコレなんで、そこだけ伝われば後は何でもいいや。」という絶妙なバランスを取ることが出来るようになりました。ホッテントリに入ってから、2年ぐらいかかりましたけど。

段々と守りたい主張とツッコミ所を記事内で両立させることが出来るようになり、頂いたコメントも「あ、やっぱそこですよねー(・ω<)テヘペロ」的な感じで受け流せるようになりました。何かを主張するってことは何かしらの立脚点を持っていますので、その立脚点の違いに拠る見解のズレは当たり前のことですから。良い悪いではなくて。

その辺のやわい気持ちをまとめた記事が他人からの評価は受け止めちゃいけない - GoTheDistanceになります。よろしければ。

承認欲求

今は全く無いですけど、はてブに慣れてくるとブクマを集めることが面白くなった時期も確かにありました。このテーマの記事じゃ伸びないからやめようとか、これを記事にすれば絶対伸びるなとか、そんな打算というか。初めて1000ブクマ超えた記事を書いた時は、正直テンション上がった。

コメントに対する耐性がついたので、書く以上はいっちょやったろか的な気持ちがで出来ちゃった。書いた記事が全くブクマつかないのはつまんなくなってしまい、ちょっとかっこ悪いぐらいに思ってた時もあった。こういう気持ちのことが承認欲求なのでしょう。

しかしですね、それらの感情はブログというかネットから距離を置くとス~ッと消えていきました・・・。

もう3万8千もはてブを頂きましたので、はてブを頂くことで何かを得たいという欲求はさすがにもう無いです。ブクマページのコメントを非表示する予定はありませんのでご安心下さいませ。百花繚乱、大歓迎です。

はてブのおかげで今がある

ブログをやり続けてきた1番の理由は、やっぱこれ。近しい人・友人が見守ってくれたから。その延長線上で、ブログを見てくれて参考にしてくれた人が増えたという好循環があって、色んな出会いや機会を僕にくれました。そうなると、辞める理由も無かった。もったいなくて。

それもやっぱり自分の軸足は普段生活しているこの世界で、自分が信頼してるパートナーや理解してくれる人たちが分かってくれればそれでいいや、と気付けたからだと思います。

インターネットでは軸足をブラすと死ぬ - インターネットの備忘録

はてブのおかげで今があるし、はてなでブログをやっていて良かったです。

また、7年前からずっと記事を取り上げてくれたカリスマ個人ニュースサイト管理人である「まなめ」氏には大変感謝しております。「はてな生まれ まなめはうす育ち」と申しますか。

最近はめっきり更新ペースが落ちてしまいました。すいません。これからも頑張りますので、よろしくお願い致します。

SQLを学習できるWebサービスを作りました。