GoTheDistance

ござ先輩と言われています。(株) クオリティスタートという会社をやっています。

生産性と所得水準の話

「所得水準はどうやって決まるのか」という議論をされています。便乗エントリ。

知りたいこと

どうして日本と中国では所得水準に違いが出るのか?

山形氏の主張

生産性の高さと所得水準の高さは直接的な因果関係が無い。賃金水準は、絶対的な生産性で決まるのではなく、その社会の平均的な生産性で決まる。なので、高度な技能を要する労働は常に高い所得が得られるというのは間違っている。成し難いことができることに対して、高い給与が支払われているのではない。

仮にメイド喫茶が今の10倍の需要が必要になり、メイドさんの人員がそのままだったら、彼女らの給料は外資系投資銀行のマネージャーより高給になることは十分に考えられるのだ。全ては需給関係が決めるのである。

確かに絶対的な職務技能で賃金水準が決まるわけではない、というのは感覚的に理解できる。例えば自分が鉛筆削りの天才で、その道ではものすごい高い評価を得られたとしても、その価値をカネ出しても買うという需要が存在しなければ、単なる趣味の域を出ない。

分からないのは、平均的生産性が生まれる仕組みだ。根拠が見えない。見ちゃいけないのかな。

平均的生産性ってこういうこと??

国際的に見て製造業の生産性は非常に高いので、その生産性で生まれて蓄積された剰余資本によって、様々なありとあらゆるサービスは、その高い生産性の人々の水準にあわせて調整される。だから日本の所得水準はカンボジアより圧倒的に高い。

という話のようだ。

競争力のある産業が生産性を高めて稼いだお金によって、他のサービスにもっとカネ払ってもいいぜという層が生まれるので、全体的に所得水準が底上げされるということのようだ。その結果、国内全体の「平均的生産性」が上がるのである、と解釈した。生産性の高い産業と低い産業が持ちつ持たれつで平均値を上げていくメカニズムがあるんだよ、という主張。

これに対して、

平均的生産性などというもので賃金が決まるメカニズムなんて無い、というのが池田氏の主張だ。

この平均的な生産性というのは、どうも日本全国のすべての部門の労働生産性の平均ということらしいが、そんなもので賃金が決まるメカニズムは存在しない。普通の経済学では、賃金は労働の限界生産性と均等化すると教えている。

スタバでおねーちゃんをバイトで1人雇うことで期待される、コーヒーの販売量の増加の加減によっておねーちゃんの時給は決まるということ。

日本では、ウェイトレスを1人雇うことによって増える売り上げは800円だが、中国では80円しか増えないかもしれない。この場合には、時給も限界生産性に均等化されるので、80円になる。では、なぜ1杯のコーヒーが日本では400円なのに、中国では40円なのだろうか? それはサービス業では国際競争が不完全だからである。

つまり、日本と中国では売上の幅が違う。だけど、それは本来ならば中国の価格をベースに均等化される。それが均等化されないのは、製品のように80円のウェイトレスをバンバン輸入できないので、所得水準の高い安いに左右されてしまうということのようだ。

労働限界性と所得基準の関係

日本では、ウェイトレスを1人雇うことによって増える売り上げは800円だが、中国では80円。私が知りたいのはこの10倍の格差を生むメカニズムだ。単なる需給関係です、という話なのだろうか。山形氏はマクロの視点から所得水準が決まることを説明している。平均値がどんどん上がっていくことで80円が800円になるのである、というイメージができる。

池田氏の労働の限界生産性というのは、どちらかといえばミクロの視点に映る。例えば今の日本で、コーヒー1杯1500円になったら誰もドトールには行かなくなるだろう。コーヒー1杯200円という水準だからこそ、労働の限界生産性というのがいきてくるというかスケールが出てくるように思える。200円なら、と思う人たちのインセンティブを下にお金が動いていく。そのイメージはできるんだけど、コーヒーの値段ってその国の所得水準によって決まると思う。賃金水準とコーヒー価格の比率はどの国でも大差ないと思うんだけど、絶対的な賃金水準に格差がある。だから値段が違う、そこまでは理解できる。でも、その格差が生まれるワケを労働の限界生産性というモデルでは説明できないのではないかと思うのです。

シリコン

とある先生に教えて頂いたのだが、論理的であるためには「主張、理由、根拠」の3つがキチンと三角形を築けないといけない。このつながりが弱いと論理という三角形が崩れるよー、という話。シリコンは上記3つの頭文字ね。経済というのは、主張と理由、主張と根拠の結びつきがえらく難しくなるなぁと感じました。もう経済ネタはしばらくやりません。

2007/02/14 追記

http://d.hatena.ne.jp/wlj-Friday/20070213/p1

正に私が悶々と感じていたことを反論として提示された。

現状では、サービス労働が貿易できない――または貿易しにくいことは否定できない。でも、その条件を前提にしたら、なぜ日本の所得水準は中国より高いの? そもそも知りたかったのはそういうことだ。それにちゃんと答えないとダメでしょう。

そしてそれを説明しようとしたら、ぼくのやった説明が絶対必要になる。ぼくはそれが、その職業の個別生産性とは関係ないんだよ、ということを述べたわけだ。これ自体には異論はないと思う。じゃあ何で決まるのか? 繰り返すけど、国全体の所得水準は、国全体の平均的な生産性で決まってくるんだ。それが池田くんの言うとおり絶対価格の水準を決めて、その中で各種の労働や財の市場における相対的な需給バランスに基づいて相対価格が決まる――まさにぼくの説明通り。池田くんの説明は、専門用語は使っているけれど、でも実は中身はまったく同じだ。

赤字の所が私がグタグタと書いた昨日のエントリの骨子でした。