GoTheDistance

ござ先輩と言われています。(株) クオリティスタートという会社をやっています。

翻訳は簡単な仕事じゃないんだ

激しく同意です。

翻訳と英文和訳

20人というのはすごく多いと思いますよ。ほとんどの人は翻訳になっていないんだから。意味を伝えられないんですよね、みんな…。原著者が原文に込めた意味を正確に表現できないんですよ。そんなのは翻訳じゃない。英文和訳なんですよ。英文和訳がうまい人ならいくらでもいますよ。名前の通った人にもそういう "英文和訳の人"はいっぱいいる。

翻訳は簡単な仕事じゃないんだ

こう思ったヒトは多いんじゃないでしょうか?

私はファウラーのPofEAAは読んだことが無いんですが、Amazonなんかの批評で「あの翻訳はひどい」というレビューが多くある。翻訳がひどいって思われる原因は実はみんな同じだと思う。日本語になってないから、だろう。

一言で書いてしまえば簡単なんだけど、日本語として通じる和訳を行い文章を起こすというのはかなり難しい作業であることを、多くのヒトは知らないと思う。英語、というか翻訳元の文章の文脈がまずわからなければ、わけのわからない翻訳調の変な日本語が踊り狂うことになる。

特に技術書の翻訳でひどいと思うのが、様々な文脈で使われているIT用語を「そのまま和訳しただけの文章」が非常に多いこと。「パーシステンス」「サービス」「ファクトリー」「インスタンス」っていう、IT技術の用語ではある一定の文脈を持って使われているこれらの言葉がものすごい意味が薄れて日本語になっているケースがかなりあるように思う。日本語の作文だったら10点ぐらいだろってヤツ。

英文和訳調の文体は早く読める

単純で変化がなくて幼稚なものは速く読めるんですよ。そんな文体がミステリーなんかでは「読みやすい」という理由でもてはやされているんです。幼稚なだけなのに…。

たとえば、会話の部分で、女の子も、ヤクザや警察官も、みんな同じ調子で話していたりする。恋人同士でしゃべっているところでも、どっちが男でどっちが女なんだか分かりゃしない。

翻訳は簡単な仕事じゃないんだ

これはひどいな…。

ただ言いたいことは、英文和訳調の紋切り型の文体は意味を深く考えなくてよいからザックリ流し読みができちゃうよ、ってことです。さらに言うと、そういった文体には例外なく余韻が無いんですよね。文としての余韻が残らない。だから考えるというか、刺激を受けることがない。そういう意味で「変化がなくて幼稚なもの」というお話につながるのでしょう。

翻訳は執筆である

社会に参加したいからとか、英語力を活かしたいとかという理由で翻訳をやって欲しくないと思いますね。だったら、外資系企業に勤めて、英語の仕事をした方がいいと言ってやりますよ。

翻訳というのは日本語を書く仕事なんだから。中には英語を書く人もいるだろうけど、たいていは日本語を書いているんですよ。それで、日本語が書ける人間ということになるんだけれど、少ないんですね、ものを書ける人が。周りをみてもほとんどいないでしょう。

(中略)

文章を書くというのはものすごく難しいことなんだから、一筋縄ではいかないんです。それに加えて外国語の原文があるんだから、とてつもなく難しいということになる。プロはそのあたりがわかっていて一生懸命に訓練をするんですね。

みんな、どうして翻訳が難しいということがわからないのかなぁ。原文があるから簡単だなんて考える人が多い。逆なんですよ。原文がなければ自由に書けるんだけど、原文のある文章を書くというのは、ものすごく難しい作業なんです。

翻訳は簡単な仕事じゃないんだ

曲がりなりにも英語記事をそれなりに訳している者にとって、大きな援護射撃です。私がお伝えしたいのは以下の2点。

  1. 翻訳は日本語を書くこと
  2. 原文がある文章を書くのはものすごく難しいこと

難しいんですよ、特に2が・・・。

新聞記事と小説では全く文体が違います。新聞記事はニュース報道が多いので、単なるファクトを伝えるだけ。起こったことを伝えるだけ。なので、文体もシンプルなものが多い。だがこれがどこかの外国人が書いた小説になると、大変。まず1文が異様に長い上に、文と文と切れ目というか境目がかなり曖昧になっている。これを全部直訳して訳そうとするとそれはそれは形容詞のメタボリック症候群のような日本語になってしまう。

それに小説で直訳は許されない。意味が失われてしまうからだ。著者がどうしてこの言葉をここでもってきたのか、なぜここでカンマを打って一呼吸おいたのか、そういったリズムなり息といったものが、直訳になると激しく損なわれてしまう。その意味で、翻訳というのはものすごく難しい作業です。中学レベルで習う単語の文章ですら、意味を損なわずに翻訳することは難しいです。

だから、私は英語が好きです。英語を読むことが好きです。

この山岡氏のインタビューはプロ論としても非常に面白いので、是非全文をご覧ください。

おまけ -Youをあなたと訳すな-

小説というか、会話をしている文章の時に英語では結構「you」という名詞が出てきます。これをキミとか貴方とか盲目的に訳すのは辞めようよ。だって普通の会話で「あなたは〜、きみは〜」とか言うか?使っても固有名詞である名前だろ?こういう名詞を形式名詞というのですが*1、日本語に訳してしまうと急にどこぞの説教親父になってしまうので気をつけて欲しい所です。これを辞めるだけで一段レベルアップした文章になると思う。

*1:これはオレの造語w