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GoTheDistance

ござ先輩と言われています。(株) クオリティスタートという会社をやっています。

プロの経営者とエンジニアの未来について思うこと

「技術者が技術要素だけで名を上げる(市場に打って出る)ことなんてできるわけないんだから、技術と顧客の間をつなぐ経営者が最も必要である」という話も定期的に話題に上がるのですが、毎年思うことは少しずつ変わっていくので、僕も私見を述べたい。

僕が2007年頃にスーツ・ギーク論争に興味を持ってスーツ側でエントリを書いて参戦したきっかけは、このソースコード、一体どういった付加価値を生んでいるんだろうというのが実感できなかったことです。仕事だからの一言で飲み込めずエントリに吐き出してしまった。スーツの考えや世界を変えないとどうしようもねぇなっていう直感が先に来た。今ではこれは確信に変わっています。なので、エンジニアの未来を考える際に顧客の利益と我々の利益をどう折り合いつけるのかが先で、個別の技術論は正直どーでもいいというcodemaniaxさんのご指摘、僕は正しいと思います。侍が明治の世に生きてゆけなかったのと同じです。

手段そのものが世界を変えることは、決してできない。

確かにソースコードには無限の創造性があるわけですが、現実に発揮できる創造性は自分が所属している企業組織が保有する仕事・業界構造に大きく左右されます。言葉にすれば当たり前のことですが、業界内の方ですらココに対する認識が甘い。手段は仕組みを超えません。顧客の価値創造に寄与し対価を頂くという意味においてソースコードを書くというのは手段でしかない。しかも、その手段は独占的なものではなく公開され入手できる技術で習得できるし、質の高低はあるけど、「動く」ものは作れる。これが悪い方向に働くと所謂「ゼネコン」構造になり、日本のSI業界の癌とも言える工程分断型人身売買推進多重下請構造モデルが形成されます。

少し補足すると多重下請け構造「そのもの」が悪いのではなくて、多重下請けを構成する力学(カネの流れ)が、単なる役務提供でしか経済的価値を生まない脆弱なもので構成されることが可能になっていることで悪循環を生んでいるから、悪である。僕はそんな気がします。

また、この不況で仕事そのものが減っているため「提供できる価値<人月単価」という図式が差し迫ってきました。単価積み上げは幅が無いですし、無い袖は触れませんね。大変結構なことです。

そういうお悩みにぶつかったユーザー企業様はどのようにお考えになられるかというと、コスト削減及び競争力強化のお題目の元、内製をご検討されます。それ自体は僕はとても歓迎すべきことだと思います。内製回帰厨だし。ただ、「都合の良い」内製回帰の場合は下請け切りの単なるワークシェアリングなので内実何も変わってないと思うのですがその点どうなんですかねと突っ込みたいけれど。逆に死期を早める気がするんですが・・・。

また「勉強会」に代表されるような所属組織を超えたウィーク・タイズのつながりも数年前から随分活発になっているように見えます。これらの活動により業界内での自浄作用が働くでしょうし、より良いソフトウェアを作ることを議論・共有できる場があるのは素晴らしいことです。業界間断絶は強いけれど・・・。僕は今小売業界の会社に属していますが、卸のバイヤーが集まって勉強会をするなんて動きは聞いたことが無い。あと、業界内の否定的な話題が目に付くのは問題提起をしているからそうなっているだけというのが僕の見解なので、ジャンジャン叩き台を出して叩いていけば良いと思います。勉強会って内輪だよねっていう話題も勉強会というムーブメント及びカタチがあるから賛同も否定も出来るんだから。そこに意味があることを信じられる人はいつだって少ない。

焼かれながら幻影の希望を追うより、失望して違う一歩を踏み出したほうがいいでしょう?

とは言うものの、僕はこの問題についていつも袋小路に入ってしまう。問題がでかすぎるので自分が解決可能なサイズに分解することが出来ないから。パワポ系の仕事は得意だし、メッセージ力には自信があるけど、現実問題僕自身も凡庸なプログラマだし、僕が持っている総合的な力はやっぱり小さいのだけれど、自分の目に映る範囲のことならなんとか一歩前に進める。経営者とプログラマはどうタッグを組むべきか、という問いにも取り組めている。

ちょっと話ずれますが、プログラマと経営者が離反する要素が強いのは、技術者は自分のやっていることを「プロセスやこだわりも含めて」そのモノ作りの構造や高度性を理解してもらいたい思いが強くあるのに対し、経営者はそんなことに1ミリの興味も無いことが多いからじゃないかと思います。経営者にとってソフトウェアの作り方を理解する必然性はゼロです。必要性はゼロじゃないけど。それは即ち、技術を会得しているモノが技術をカネに変えることに誰よりもセンシティブにならなければならないことを意味している。技術それ自体は1円にもならない現実がいつも忘れられない。

それと、日本のICTベンチャー業界(?)全体として良い意味で盛り上がりに欠けている気がしている。景気が悪いからとかそういうのではなくて。ICTベンチャーが生み出したものを社会的なインフラに育てていこうという機運というかメカニズムのようなものが、シリコンバレーとかに比べて絶望的に希薄だと感じる。はてブの見すぎかなぁ・・・。景気の良し悪しに思いっきり左右されるPV水増し広告収入モデルに依存せざるを得ないこの苦しい状況をどうして行くのだろう?一円にもならないWebサービスの乱立の先にどんな未来があるのだろう?ユーザー自身に課金可能なメリットがなければそりゃ続くわけねーだろって思うけど、とにかくそんな議論をしているのが読みたいし、そういう議論をしている所に顔を出したいので、誰か誘って or 情報提供して欲しいです><

僕は日本のSI業界の未来を悲観していますが、別に今のままである必然性ゼロだしSIという業界が楽しくあるようにどうしたらいいのかについてはいつも考えているつもりです。叩き台ならいくらでも出す。しかし、SIがなくなる/なくならない、ゼネコンは早く解体しなさいの大合唱をしてもどこにも着地点が無いから、僕は全然興味がない。対立軸を煽って利するのは武器商人だけなので気をつけましょう。

僕は内製回帰にビジネス構造の変化の活路を求めていたし、それを自分が挑戦できる場があったから別に失うものも無いし今しか出来ないことをやってみようと思ったけど、正直相当しんどい。かといって今更引けないので、異業種+プログラマの組み合わせは最強パーティの1つであることを確証できるところまではいきたいなと思ってます。