GoTheDistance

ござ先輩と言われています。(株) クオリティスタートという会社をやっています。

エンジニアの生きる道は開発の現場だけじゃない

今まで1ミリも考えたことが無いのですが、せっかく定番のネタ「エンジニア35歳定年説」で色々エントリを拝見できたので、自分の「モヤっと」を整理しておきたいと思います。

発端となったyusukeさんの新プログラマ35歳定年説、あるいは2010年問題 (arclamp.jp アークランプ)は拡散的なので難しい所なのですが、言わんとしていることの1つに「プログラミングだけを武器に35歳以降を戦っていくのはすごく大変だし、それができるのは一握り」ってことがあると思います。僕もそう思います。

僕はプログラマとしての自分は凡庸よりちょっとマシぐらいだと思っているので、正直な所「35になろうが40になろうがコードで力の差を見せ付けるぜ」という気持ちがありません。常に前を走れる自信がありませんし、僕には必要無い。

「いやーこの案件は○○さんの腕が無いと決して出来なかったよ!」って感じで純粋な技術力をもって自分の価値を提供するという生き方はすごいと思うし、それができれば迷いも少なくなるんでしょうが、同じ世界のピラミッドの頂点をひたすら目指し続ける生き方が、僕にはできそうもないのです。諦めたほうがよさそうだ、と。なんというか、野球でたとえると若いピッチャーが直球の球威だけで押し切ろうとしているように思えてならなくて。でも、直球の球威落ちたらどうするのって。

そう思っている人っていっぱいいると思うんですけど、この35歳定年説は「歳に関係なくすごい人はすごいし、ダメな人はダメ」「どの業界でも中年になってまだ与えられた仕事しかこなせないのはダメ」「技術についてこれなくなったヒトが自己正当化のために使う言葉」「人月オワタ」ってのが多くて、なかなか似たような言説を見かけないので、僕が言い出してみます。

私は新しい技術を学ぶことを重視しているが、新しい技術に没頭するというのは、同じ場所に居続けるために全力で走っているにすぎない。どこか別な場所に行こうと思ったら、2倍速く走らなければならないのだ。それは5年たっても陳腐化しないようなトピック――人間的側面とデザイン――について学ぶということだ。

あなたの知っていることはすべて5年以内に陳腐化する

これを書いたのは、あのJoelです。Joelのようなプログラマでもこんなこと言っている。

僕はSI業界からもWEB業界からも離れてしまって、なにやってんだろ自分って思うことも多くなってしまったんですけど、技術者の居場所はソフトウェアの開発の現場だけなんですかね?昔からそこが疑問なんですが、そんなこたぁないと思うんですよ。ITってそんなに応用効かないですかね?技術的興奮は少ないかもしれないですけど、商売につながったほうがいいと思うようになりました。自分の居場所がそこに出来るから。

現実問題として情報技術は企業の仕事のやり方を変えたとは思うんですが、あり方を変えたとは思えないんですよ。ITで企業の生産性が云々とか言う前に、ITを使うヒトを信じて企業のあり方・働き方変えないとITは拘束具になるだけだって誰か言えよって思うので、僕が言い出してみます。脱線したw

技術の競争の最前線に居続ける努力をしても、F1はF1の世界でしか生きられないし、それを必要としない企業も多くいます。コモディティになったもんで充分っていう顧客がいっぱいいます。中小とか特にそうです。情報技術が企業のあり方に大きな影響を与えないから。そういう会社のほうが多いし、今後益々多くなるでしょう。ITが融けていけばいくほど。

ニコラス・カーのIT Doesn't Matterという本で、「特注のぽんこつ車を作れば非常に高くついたかもしれないが、少なくともライバルより優れたアーキテクチャを作るチャンスはあった。でも、タクシーの捕まえ方に差など出ない」というくだりがあって、それも強烈に忘れられない一文です。

でも、「情報技術が企業のあり方に大きな影響を与えない」のは裏返せば「ある業界内の構造的な欠陥を見出せば、一気にニーズが噴出して化ける可能性がある」ってこと。僕がやりたい!と思っているのは後者のような仕事なんですが・・・・荒れた荒野を耕して種を植えて実を咲かすようなものなので、甘くないです・・・・。

話それちゃったんですが、35歳が定年かどうかを議論してもたいした意味が無いので、「自分がどうやってITを武器にして生きていくのか」を考えるちょうどいい年齢が35前後ぐらいにとどめておくのが一番生産的だと思います。その上で、業界の中で生きるのか、業界の外に居場所を求めるのかを、なりたいなーという自分に照らし合わせて考えていく。

業界が自分の理想に近づくのを待っているには人生は短すぎると思う、30歳の夏です。