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ござ先輩と言われています。(株) クオリティスタートという会社をやっています。

【書評】マリンITの出帆: 舟に乗り海に出た研究者のお話

地元の図書館にたまたま新着で入っていたので、読んでみた。とても面白い試みだったので、紹介します。

マリンITの出帆: 舟に乗り海に出た研究者のお話

マリンITの出帆: 舟に乗り海に出た研究者のお話

イカ釣りの機械のモーター制御からキャリアを開始

著者はカンブリア宮殿にも出演した東和電気製作所さんで、イカ釣りのモーター制御のプログラムを書くことからキャリアを開始。テグスがピンと張っている時は構造上イカが逃げることは出来ないが、船の揺れや海の状況によってテグスが緩みだすと、イカは逃げてしまう。

というわけで、漁船の揺れを検知してテグスが緩まないように、モーターの回転を制御するプログラムを書かれたそうです。C言語だよな、きっと。組み込み系の話は面白い。

ちなみに、簡単に言うとこういうロジックで算出されるそうです。計算の変換には積分を使うらしい。

  1. 加速度を検出し、速度に変換
  2. 速度を変位に変換し、モーターの回転速度に変換
  3. 補正する回転速度を出力

大人になると(特にITの仕事をすると)、数学が色んな現象をモデリングしていることに気づいて面白い。GPS三平方の定理を使って現在の位置を割り出すとか。学生の頃知りたかったですね。'`,、('∀`) '`,、

www.tbs.co.jp

ユビキタス・ブイ

「ホタテ養殖のために、海水温観測のブイを作って欲しい。10万で。」

環境省が導入するクラスのブイが、数千万円。漁業用で安価なものでも、数百万円。でも、ひとりの漁師が出せる予算は、10万円。水温観測をしたい理由は海水温を検知してホタテが大量死するのを未然に防ぐため。

・・・当初は10万円で出来るわけねーだろというお気持ちで試作品を作ったそうですが、漁業組合の青年会の方々の協力の下、地道なサンプルデータの収集を続けることで段々と実用化に向けた手応えを感じられ、「ノーマリーオフ」機能を組み込み実用化されたとのこと。素晴らしいですね。

その他にも色んなお話があり、iPadを使った漁業日誌アプリとか、漁船に無線LANを導入した話とか、現場に則した実践的なお話が多くて楽しく読めました。

制約なき開発は作業に過ぎない

本書の114p〜115pに書かれていて、これはと思いました。

新しいものを開発するときには、必ずチャレンジを含めるようにしている。つまり、少々厳しい制約を設けるのである。(中略) 何よりも、制約を設けないと工夫するために頭を働かせるチャンスを失ってしまうのである。実にもったいない。

最初からできる事が分かっている開発は単なる作業であり、そこに創造性はなく、次に活かせる技術も身につかない。その結果いいものはできず、達成感もないから愛着もわかない。

エンジニアの成長についてのほとんどすべてが書かれている文章ではないでしょうか。

マリンITの今後に期待します

今後のマリンITの目指す先はどこになるかわからないのですが、恐らくは方法論を確立して標準化を目指していくことになると思います。海水温のリアルタイム解析とか、海底の地図におけるGoogle Mapとか、やりたいことは色いろある中で、Python的な「間違えようのないやり方がひとつだけあるのが望ましい」という方法論を、産学連携して築いていけるといいなぁと思いました。

こういう話を聞いてると、ソフトのみでもたらすことが出来る革新的な物事って、そんなにないですよね。まずはハードを開発できないと新しい体験は生まれないだろうし、どんなにソフトをとっかえひっかえやっても、ハードそのものが変わらないとダメだなぁと。その意味で低レイヤーの技術とWeb技術の両方を会得するレイヤーフルスタックなエンジニアが、5年後には花型になってるかもしれませんね。

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