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GoTheDistance

ござ先輩と言われています。(株) クオリティスタートという会社をやっています。

【書評】システムインテグレーション再生の戦略

技術評論社、傅さんよりご恵投頂きました。システムインテグレーション崩壊 ~これからSIerはどう生き残ればいいか?の続編という位置づけです。

システムインテグレーション再生の戦略 ~いまSIerは何を考え、どう行動すればいいのか?

システムインテグレーション再生の戦略 ~いまSIerは何を考え、どう行動すればいいのか?

本書は全体的に横文字が多く拡散的になっていますが、方向性を指し示すのが目的ですのでこんなもんかなと思います。「これしかありません」という話はできないですから、色んなヒントを得られるように構成されています。

工数積算やめてどうするの?

ポストSIビジネスというものに問われているのは、「工数積算を辞めて何をしたらええねん?」が主たるものです。ポストSIビジネスモデルとして合計12個のモデルが提示されていますが、切り口が違うだけで提示されているメタ視点は実は同じではないか、と。それが下記です。

「工数積算をやめる為には、納品までのスピードを”圧倒的に”速くするしかない。速くするにはスクラッチ開発を減らしてメニュー化する(or 自動生成する)しかない」

工数積算で3000万じゃペイしないとしたら、まず3000万を下げる必要がある。仮に1500万としましょう。半額にしてもエンジニアの人件は同じように発生する。でも工数は圧縮しなければならない。スピードを上げて単価を下げるためには、クラウドなのかPaaSなのかわかりませんがスクラッチ開発を可能な限り極小化してメニュー化するしか無く、「どこでメニュー化するのか」が切り口として違うだけ、という見方をしました。

お金をもらうスキームは、月額定額 / 買い切り/ 成果報酬などがありますが、どの選択肢を選んでも額は下がる。期間を短縮すると「そんなに速く出来るのに、この値段って高くない?」が絶対に前に来ます。技術的価値を正しく理解しろって言っても無駄。殆どの人は真価に興味はなく、ボリュームで判断するしかありません。速くすれば単価は絶対に下がりますから、数を叩くしか無いです。

アジャイルで請負開発ねぇ...

いい加減にしてくれませんかね、これ。前作の崩壊編でも未来図のひとつとしてこの話が乗ってたんですけど、地雷の可能性がとても高い。

本書では「納期と工数と金額をあらかじめ確定させ、その範囲でビジネス目的達成における重要度から開発対象となるビジネスプロセスの優先度を決定し、順次開発する。その期間で優先度が変わっても、着手されていないプロセスの開発順序が変更できるので、変更への柔軟性を担保できる。」のがアジャイル型請負開発の概要として書かれています。100pです。

・・・これ、まんまウォーターフォールじゃん? どこがアジャイルなの? 営業の手の平かな?

優先度が変わっても別の機能を作ればいいって、クリティカルパスが死んでるのに枝葉埋めてデスマになる絵しか浮かばない。寒気がする。

納期・工数・金額が決まってるなら「コレ以外やりません」or「多少のブレを見越して、リスクバッファーを積んでカネを取る」しか身を守る術はないの。ビジネス価値を正しく見極めるためのアジャイル。わかる。でも、その価値はコードを書いてから「これじゃない」とブレていくのが肝。決めた内容を作ることに成果責任を問われる以上、それを守るのが最優先になるって。ウチはアジャイル開発が得意なので開発の順序は優先度や内容については変更が効くようになってます、アジャイル開発だからご安心ください的な営業トークは、もう完全にホラー映画の世界。

このモデルを推すのであれば実際にこのモデルで成果を出している会社の事例をビシっと書いて欲しいです。請負が求められないとは言いませんが、本書のはじめに一括請負は構造的欠陥を生み出す的な文脈で書いてあるのに、なんでアジャイルで請負はOKになるのか僕にはわからなかった。ユーザーが本当に必要なものを作ることがどれだけ難しいか、考えてほしいものです。

システムインテグレーション再生の戦略 ~いまSIerは何を考え、どう行動すればいいのか?

システムインテグレーション再生の戦略 ~いまSIerは何を考え、どう行動すればいいのか?

本書に書かれているように新しい動きは確実に始まっています。ざっと現状を整理し、長期的な流れがどうなっていくのかを考える為に本書を当たるのは、もちろんアリです。


アジャイル請負だけは賛同できないけど。