ここ2年ばかり新卒採用のお手伝いをさせてもらっていて、毎年この時期になると就職活動の学生さんと話す機会があります。毎年似たような感想を抱く。
学生は仕事が分からない
「安定している会社」「福利厚生が充実している会社」「技術を教えてくれる会社」などなど、なんとなく「いい会社」のイメージを思い描いているだけで、それが自身の人生にどう役に立つか、筋道だった考えを持っているわけではないことに改めて驚かされます。
弊社でも同じです。
毎年、間違いなく最も多い層は「SEという仕事がよくわからない」です。ウチはSIerなので募集対象はSEがメインなのですが、「では、SEという仕事を1分で説明してください」と言ってキッチリ説明できる学生なんて3%ぐらい。
でも、それは仕方の無いことではないかとも思う。だって、オレ自身も5年前に就職活動した時は右も左も分からなかった。バイトでITをかじって、多分営業には向いてないしもうちょいIT技術身につけたいからSEでいいや、ぐらいの気持ちでしかなかった。コレは何でも同じだと思うんだけど、イメージしか持てない人間に仕事のディテールを語っても響かないだろう。ディテールからまたイメージに変換されちゃうから。
かといってイメージで物事を考えて決断していいワケがないので、どうしたもんかと思うけど・・・。
だけど、そういう「仕事の内容がよくわかんない」学生にとってみたら、とりあえず安定していて様々な仕事が出来る可能性のある大企業でキャリアを積むという判断は大変合理的。大企業のSI会社で4〜5年仕事すれば、様々なキャリアパスが描けるようになる。Whatが定まっていない上に、なおかつ会社を見極める能力なんかあるわけない学生にとってみれば、アタリをつかむよりハズレを防ぐようになるのは間違いではない。私自身も「迷うぐらいなら大企業を選んだほうがいい」と学生に言っている。
文系と理系
これもよく聞かれる。ハッキリ言って「そんな区分けには意味を感じない」というのが私の答え。
恐らく文系と理系というのを気にするのは、
- 「技術」というのが多分に専門的である
- 理系の学生は授業でITに親しんでいる
IT技術をやったことがない故に起こる、上記2つが混ざったコンプレックスのためだろう。
でも、それは間違ったイメージでしかない。未経験でも技術を身につけることは出来るし、逆に言えば文系だから技術を身につけられない理由などどこにもない。理系の学生さんは、当然未経験の文系の学生さんよりもIT技術に対する知見や知識を持っている。それをどうこう言っても始まらないし、重要なのは今時点の知識や知見の大小ではない。
重要なのは、プログラム言語でもネットワークでもDBでもOSプラットフォームでも何でも構わないから、「自分が身に着けたい」と思う技術を会得している「師匠」を探してその人にひたすらついていくこと。身に着けたい技術が探せなかったらとしたら、配属先で扱う技術について真摯に向き合うことです。
一番いけないのが、分からないままに先へ進んでしまい、未知なモノにたいして蓮っ葉な態度を取ること。技術においては、曖昧な理解は一番いけません。分からないことをカミングアウトするのも仕事のうちだと思うべき。教える立場からしたら、何が分からないのかハッキリ言って欲しいし、蓮っ葉にわかったような態度をとられると教えるモチベーションがストップ安になります。
「なあ山下、人って経験を重ねてくと、大きく2つの方向に分かれるよな。
モノをどんどん知ることによってスレていって鈍くなる、良くも悪くも強くなって大胆になる方向。そしてもう片方は、経験するたびに慎重に臆病にそして丁寧になる方向。他の世界はわからないが、こと車の世界じゃだんぜん後者がいいよな。
なにしろ車は機械だから、そして機械は正しい精度と正確な操作を求めてるから、ままよと、曖昧な判断は車という機械には絶対通じない…。」
湾岸MIDNIGHT 確か第32巻より
車をシステムに置き換えて読んで下さい。湾岸MIDNIGHTは名言の宝庫!
もうちょっと、あと少し
また湾岸Midnightから。
「富永はただ友也のまっすぐな見方に接したいだけなのよ。自分がもっとわかりたいから…、そうだろ?
富永だけじゃない。オレもお前ももう人生の3分の2をクルマと過ごしている。他の仕事に変わった仲間も多いのに俺たちはいつまでもこの世界にいる。何故続いた?なぜオレ達は同じことを継続してやってられる?
わかりたいからだろ。あと少しもうちょっと、いつもそれだけでやってきた。同じコトを繰り返してちゃそのうち萎む。継続できない。」
「いつも探してますよね・・・。」
「探している、何でもいい誰でもいい教えてくれよって。ただ今の接点を求めてる。いつも貧欲に。ついてこれなくなった者はただ去るだけ、そうだろ−」
湾岸MIDNIGHT 間違いなく第30巻より
つまるところ、ここだと思う。
もうちょっと、あとすこし。それでやっていける何か。そのWhatが見つからないのなら、今取り組んでいることの対するHowを楽しむ。やっぱこれだろ、って思います。