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【書評】ITシステムの罠31 システム導入・運用で絶対に失敗しないための本

実業之日本社、酒井様より献本御礼。

ITシステムの罠31 システム導入・運用で絶対に失敗しないための本

ITシステムの罠31 システム導入・運用で絶対に失敗しないための本

酒井様いわく、何故使い勝手の悪いシステムが生まれてしまうのだろう、という疑問が本書発刊のきっかけとなったそうです。

本書は外資系コンサルのATカーニー社にてハーバード大のMBAを卒業された超エリートが監修をされております。システム部門、ユーザー、経営の3者が共通言語を持てるようになるまでの「罠」を31点挙げられております。ERP導入したけど現場で使っているのはExcelや野良システムっていうのはあるある過ぎますね。パッケージのカスタマイズを前提にするならスクラッチで組んだ方が結果的に安いケースが多いとかね。あるよね。

正直なところ、本書を読んでだいぶ悲しくなりました。挙げられている失敗談の多くがITがブラックボックス化しすぎている。成功裏に導くほうが難しいぞ・・・っていう読後感。ATカーニーさんの事例が元になっているのでしょうから、フィクションではなく実際の現場で起こっていることなんでしょう。残念です。

本書で挙げられている罠の中で最も悲しい事例が、事業会社の部長さんが新規事業開発の為に取引先のITのベンチャーの技術者を引き抜いて内製部隊を作ったけど、仕様の策定権が内製部隊にないので全くスピードが出ない上に何を作っていいかも不明瞭で、当然のようにゴミのような成果しか出せず、このチームの処遇に困ったという話です。内製回帰の失敗事例、結構多いみたいだね...。

まずいと思ったらすぐに辞めよう

ITプロジェクトほど最初の1歩目から間違えたら後工程全てが駄目になるものはないな、と本書を読んで改めて痛感しました。1歩目は多くの場合要件定義の工程でしょう。

要件定義の工程は、食べ物のレシピを作るような工程です。「トマトソースパスタ」を作って皆で食べようと仮定します。でも、「トマトソースパスタ」のレシピって千差万別ですよね。トマトソースパスタの味の違いをレシピを見ても分かる人ってそうそういないよね。実際には口に入れないと(試食しないと)分かんないですよね。ユーザーはパスタを作る料理人じゃないし、プロが設計書を見てもそこからROIを判断するのは原則困難です。

上記のような状態が本書でもある「経営とITが共通言語を持てない」状態です。もう見飽きたぞ、この光景。なので、どの種のプロジェクトよりも、ITは撤退の決断が重要になります。間違いが発覚した所まで全てを巻き戻してやり直すしか無いので、間違ったことを頑張って推進しないで下さい。本書で挙げられている罠が複合的になって、役満クラスになっちゃいますよ。

XX化という言葉は使わないで

本書の残念な所はもう1個あります。全体的に論理展開が雑です。効率化・可視化・最適化・具体化・・・左記のような「XX化」という言葉がかなり多いので、尻切れトンボ。コンサルさんはこのXX化が大好きですね。XX化というのはビジネスにおける「通っぽい言葉」で、これほど費用対効果が不明瞭なものもない。でもそれなりに筋が通せるし、同時に銀の弾丸っぽい。僕にとってはNGワードです。

システム導入・運用で絶対に失敗しない方法を無償で教えます

最も残念なことは、この本を読んでもあなたがITシステムの導入に失敗する可能性は引き継き高いことです。失敗談を100個並べて穴が空くまで読んでも、失敗の兆候は経験でしかわからない。だけど、僕はシステム導入・運用で絶対に失敗しない方法を知ってます。タダで教えますね。自分で作って下さい。自分で作ったものを導入して運用して下さい。仕様を考える人と実際にプログラムを書く人を同一人物にして下さい。これだけです。

なんで失敗しないかと言うと、仕様の策定者と実装者が同一になれば、ユーザーと経営とIT部門で共通言語が持てるからです。本書の主題は、ITがと経営の間で共通言語が持てないままビジネスとITが分断されてしまうことがITプロジェクトの失敗の元凶にあるという警鐘です。共通言語が持てない理由、ひとつだけですよ。自分たちで改善できないからです。改善できない理由? 管理できないからです。管理できない理由?自分で手を入れていないからです。逆説的ですけど、失敗したくないなら失敗のリスクを取らないと絶対に失敗するんだよね〜。

僕が書いた絶対に失敗しない方法が極論すぎるとお考えの方も多いでしょう。是非、本書をあたって下さい。僕の言いたいことの輪郭が、より鮮明になること請け合いです。

ITシステムの罠31 システム導入・運用で絶対に失敗しないための本

ITシステムの罠31 システム導入・運用で絶対に失敗しないための本

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