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ござ先輩と言われています。(株) クオリティスタートという会社をやっています。

【書評】世界を動かすプロジェクトマネジメントの教科書

技術評論社傅様よりご恵贈頂きました。いつもすいません。

こちらは初めてマネージャとなってチームを束ね、ひとつのプロジェクトを完遂させる為に何が必要なのかを書かれた入門書となっています。タイム・コンサルタントの日誌から というブログの中の人の一冊です。

WBSをちゃんと作る

本書の8割はここです。プロジェクトマネジメントの最大のポイントは、WBSが正しいかどうかです。間違ったタスクを管理してもしょうがないですから... タスクの妥当性を検証するには、それらのタスクを全て足して100となるかどうかで判断されます。簡単にいえば、抜け漏れがあってはならないということです。

では、WBS作成の抜け漏れを無くすにはどうしたらの良いのか。本書で触れられているエッセンスをご紹介します。

P-WBSとF-WBS

WBSの作成にあたっては求められる成果物をつくるために必要な「すべての作業(アクティビティ)」を「ゴールから逆算して」洗い出す必要があります。逆算して下さい。足し算するとメタボになります。それを吟味するために、成果物に着目したWBS(Product-WBS)と機能に着目した(Functional-WBS)の2つを作ると書いてありました。

例では冷やし中華という成果物をつくるために、成果物の構成要素に着目しアクティビティをリストアップします。麺、きゅうり、たまご、タレ、トマト...こんな感じですね。これだけは全部テーブルの上に乗っけただけなので、次は工程に注目します。作業の流れに沿って、いつどの作業をしなければ必要な成果物が出来ないのかを考えます。レシピを決める→食材を調達→調理→味見→配膳、みたいな感じです。

重要なのは、P-WBSとF-WBSは必ず交差します。仕事を生み出す構成要素(インプットとアウトプット)と、それらに必要な機能群が交わらないことはあり得ないからです。というわけで、これらをマトリックスにまとめたのがこちらの画像です。

https://dl.dropboxusercontent.com/u/1516411/activity_matrix.jpg

こうすることで、各工程の抜け漏れを成果物の構成要素とその要素を扱う工程、いわばダブルチェックを走らせることができるというわけです。確認できたアクティビティマトリックスはリストとして一覧に落としこみます。

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ここまでくれば、インプットとアウトプットに前後関係が生まれますので、それをチャートに並べることでネットワークダイアグラムという工程表の完成となります。そして、クリティカルパスを見つけて下さい。

この方法さえマスターすれば、確かに誰もある程度正確なWBSを組むことができるでしょう。構造的欠陥がないので。正確さの精度はWBS以外の要因もありますので。見積期間が甘いとか、そういうやつ。

クリティカルパスを守れ

クリティカルパスが分からなかったら絶対本書を読んで下さいね。で、プロジェクトの納期を短縮させるにはクリティカルパスを短くするしか無いので、それに関係のないタスクを前倒ししようが無駄に時間を食い潰すだけですからね...

クリティカルパスをどう守るかについては、故エリヤフ・ゴールドラット博士のクリティカルチェーンが有名です。本書でも簡単に取り上げられていますが、非常に単純に言うと個別タスクにバッファを持つのではなく、プロジェクト全体にバッファを設けようという考え方です。

クリティカルチェーン―なぜ、プロジェクトは予定どおりに進まないのか?

クリティカルチェーン―なぜ、プロジェクトは予定どおりに進まないのか?

予算・進捗・リスク管理

WBS作成以降は各々1章ずつ上記テーマについて書かれております。どれも重要なポイントです。が、個人的にはアクティビティマトリックスがヒットだったので、その話ばっかりします。

アクティビティマトリックス。ええわ、これ。アクティビティマトリックスの応用範囲はすごく広い。あらゆる仕事に使えると思うんですよ。機能を作る時だって、成果物と処理内容に着目しますもんね。

プロジェクトマネジメント、きほんの「き」

本書を一言でまとめるなら、こういうことだと思います。リファレンスとしても重宝する一冊です。自信を持ってオススメします。

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