人月単価からの脱却というテーマも毎年のように浮かんでは消えていくのですが、その時その時で思うことは変わっていくので、現時点の考えをちょっと整理してみたいと思います。
どこでも言われていることですが、人月の最も絶望的なところは「成果で価値を図ることが出来ず、猫も杓子もみんな同じ」になることです。初心者でもプロでも、同じ値段。だって手間賃+αだから、と。おごちゃんがSIerでは、1人が1人分しか稼げないという指摘をされており、僕もこの点においてSIerに絶望しています。個人が飛躍できるエコシステムが、どこにも無い。生産性が高くても給与が上がらないとか、人月見積もりは生産性がどうという主張は「りんごは赤い」という話に聞こえるので、逆に大丈夫かと心配になる。
初期費用が少なく借金することもなく、極論するとたった1人でも圧倒的な成果を出せるレバレッジが効くのがIT(知的成果物)の一番のメリットなのに、その成果を売らず作業量を売る「単価」という尺度を採用する理由が見当たらないのです。人月が否定的に語られる場合は、程度の差はあれど、大抵この文脈です。
ここだけ書くと人月最悪のように思えますが、実は人月を望んでいるのは業者側なことが多いのではないかと考えるようになりました。「のびしろ」が無いだけで、それ以外のデメリットはあまり無いと考えていると思います。人月は確かに「1人が1人以上稼げない」わけですが、見方を変えると「どう転んでも、1人が必ず1人分稼いでくれる」スキームでもあります。誰でもお金を稼げるんだから人月OKじゃんっていう見解。ぶっちゃけ、人月辞めない理由はここじゃない?技術者自体はその会社で直接的にお金を稼ぐ仕組みを作らない限り1円の価値も生まないことを鑑みると、ね。蛇足ですが、ユーザー企業において間接スタッフ扱いされてしまうのは、ここが一番大きな原因じゃないかなと思っています。
多分こういう議論が10年泥のように繰り返され、ならば「パフォーマンスベースの価格設定(PBC)」だという話が出てきているけれどシステムやサービスが創出する価値ってどうやって図るのという永遠の課題が出てきて、単価という道は行き止まりだけど他の道が全部荒野でどうしよう、と。そこで経営者が必要だという話になってきて要は業者側のマーケティング・営業といった部分が弱い・やり方が間違っているのではないか、という意見が多いように感じます。
あとSIerがディフェンシブにならざるを得ないのは、これも何度も語られていますが、アタマから「100」を定義して顧客の予算を確保してからそこから引き算して利益を出すようなモデルになっているからです。それを脱却するためには「10」から初めて加算して100にも200にもしていくようなやり方にしていけば良いと感じていますが、それをやるためには「pay for performance」という価格設定にするしかないので、今のSIerにとっては180度転換を求められる為、埒が明かない状態なのではないかと感じています。それに、お金は貰えるときにもらったほうが絶対いいし固定費の高い業種だから、とりっぱぐれを考えると、怖くてなかなか出来ない。
ホントに未成熟な業界です、だが、それがいい。
結論はもう出てるんですよ。単価を超えるしかないんです。技術者の技術を減損せず価値に転換する為には、単価を超えるしかない。そこに共通解(=銀の弾丸とほぼ同意)が無い事はもう明らか。各自が自社のビジネスモデルに最適な価格設定を作るしかない。PBCの資料(PDF)でもいくつかのモデルケースを用意してるのはそういうことですし、従量課金が合うサービスもあれば定額があうサービスもあるので、あなたの会社の価値はドコにあるんですかというそもそも論からスタートせざるを得ない。
僕が転職して今取り組んでいることは、技術者が1円の価値も生まないとかそんなわけーねだろ技術者サイドが自分達の価値を説明できてないだけだっていう意地に端を発して、技術者が必要とされなかった物売りの会社で直接的にお金を稼ぐ仕組みを作る事です。そこにたどり着くためには、弊社の場合は内製しかなかった。
そんなところで。