私の観測範囲が狭いということもあるんでしょうが、ある企業の決算において営業利益が98%減になった事例を知らないので飛びついてしまいました。この会社は平成24年に上場しておりそれ以前の数字はわからない為、2期のみの比較となります。
決算期 | 売上高 | 営業利益 |
---|---|---|
H26年第1四半期 | 3.49億 | 0.02億 |
H25年第1四半期 | 3.98億 | 1.12億 |
ソースは平成26年3月期 第1四半期決算短信(PDF)にあります。
売上が12.3%減。不景気ですしまぁこれぐらいはどうってこと無いよなって思ったら、営業利益がとんでもなく減少しています。98%の減少です。トレンダーズのIR資料を読んで、原因は以下の2つにあると思います。
各事業のシナジーが全く見込めない件
1つは、大手顧客企業の開拓が想定通りに進まず大型案件の受注が減少したこと。ステマ問題があったことをほのめかす記述がIR資料に書いてあるので、ペニオク的なやらかしがあったんでしょう。「マックのステマ疑惑で非難も」上場したトレンダーズの正体(1/5) | ビジネスジャーナルに詳しい。
これに嫌気をさしたクライアントが逃げ始めてwomediaとかいうサービスの売上が下がり、営業利益も半減したとのこと。このサービスの利益率は非常に高かったので大型案件の失注・撤退が響いてる模様です。御社の商品をwomedia会員に即したターゲティングをして体験レポートというブログを通じてプロモーションしてあげますよ、というサービスらしいですね。
他にも2つ事業展開しています。1つが、Amazeというもの。会員数が10万突破したそうです。ポンパレが流行った時に出来たのかな。プランという単位で無料でコスメがゲットできたり旅行に行けるというサービスのようですが、2年間で250件程度のプランしか無いので会員数に対しては圧倒的に案件数が少なく、だんだんと飽きられて死んでいる模様です。10万人の会員がいるはずなのに、Tweet数が0とかあり得るんですかね・・・。
もう1つがキニナルモンというサービス。iPhone/Androidアプリの提供。内容はクイズに答えてFB/TWにPOSTしてポイントゲットしてお小遣いを稼ごうというもの。Amazonギフト券などを引き換えられるらしい。現在15万人が落としたそうなんですが、50万になってもだから何やねん。ポイントはトレンダーズの負債そのもので、B/Sにしっかり負債として計上されています。733万円が引当金として。どうやってトレンダーズにカネが落ちるのか見えないんですね・・・。
全てのサービスが利用者無料であり、射幸心を煽る仕組みもないので利用者から課金を行うことは大変厳しく、広告掲載やスポンサーとのタイアップで売り上げを稼ぐしかないビジネスモデルの上、各々のサービスの交流は感じられず、断絶しています。オールラウンドを目指すのはいいけどシナジー効果のないゴミをいくら集めてもしょうがないだろって突っ込まれそうです。
販管費が3000万UPしてる件
もう1つが、前記に比べて販管費が3000万UPしていることです。四半期で3000万って単純計算で通年で1億2000万アップしてます。かなり新卒を採用されたのでしょうか・・・。
天下のカルチュア・コンビニエンス・クラブと組んで新しいサービスを開始したり頑張っておられるのですが、そこには人が動きますのでどうしても固定費が高く、なかなか損益分岐点に到達していない模様です。
実はお荷物状態のキレナビ
また、美容医療ポータルサイト「キレナビ」においては四半期で1100万の売り上げを上げているもの、600万の損失を出しています。1年前の1Qでは600万の売り上げに対し1500万の損失を出しています。いいですねぇ、後に引けない感がクールですね。1100万の売上を作るのに1700万のコストが必要なので、仮にランニングが四半期に1700万固定とするとこれが黒になるには(1700/1100) x 1700 = 2627万の売上でやっと四半期がチャラ。チャラでは論外ですから、1年で1億ぐらい売らないとあかんことになります。実際には2300万前後で黒になるでしょうが、1億叩かないと会社を支える事業としては物足りない。
キレナビ自体は平成23年4月にオープンと有価証券報告書に記載があったので、残念なことにこの2年間でひたすら赤字を垂れ流しているのがキレナビを始めとしたメディア事業になっています。現状ではキレナビはお荷物以外何者でもない状態ですので、このままリソースを投入し続けるべきか悩ましい所です。営業利益が98%減ってのは、どう考えても投入すべきリソースを投入してはいけない所に突っ込んでる結果と解釈するのが自然でしょう。
追記(2013/12/24)
キレナビ事業をサイブリッジ社に譲渡とオフィシャルな声明がありました。
これにより特別損失が1000万上げておしまい、となるようです。
かといって、すぐには倒産しない
気になる資産ですが現金が11.9億ありますので、まだ慌てるような時間ではないのかもしれません。負債も流動・固定合わせて2億前後です。突っ込んだカネが全部溶けているだけでまだまだ燃料はたくさんある。ですが、四半期で6万弱の純利益が残り9ヶ月で爆発的に増えるとは思えません。タコが腹減って自分の足を食い始めている・・・そんな前奏曲が流れています。
最悪のシナリオは現金が唸っている状況の中で一発逆転を狙って投機性の高い商売に多角的に手を出してしまい、大損して資産を溶かしまくることです。端的には不動産投資やソーシャルゲームの乱発等。後者は考えにくいですが、一例として。SCSに吸収されたCSKは不動産投資を焦がしてから資金繰りが超絶悪化しましたので、同じ轍は踏まないよう祈念しています。
今年の12月頃にはどうなっているのでしょう。V字回復は無いとは思います。特別損失で赤字計上なら分かるんですが、営業利益が足りなくて赤字決算になるとかなり厳しい。新卒で入社されたい学生さんは現状かなり厳しい状況になっていることを認識しておくといいでしょう。