GoTheDistance

ござ先輩と言われています。(株) クオリティスタートという会社をやっています。

パッケージは標準化と固有化の振り子のなかで成長する

本を整理していたら、小室直樹氏の「日本人のための経済原論」という本が出てきました。先日図書館で「数学嫌いの人のための数学」を読んだばかり。買おうと思ってた本が出てきたのでうれしくなってしまい、早速読んでた。*1

経済成長はスパイラルである

前述の経済原論本の骨子は、経済というのは自己増殖の過程を経て拡大 or 縮小するもんである、ということが挙げられる。詳細は省くけれど、消費が拡大する⇒それを元に生産量が増える⇒増えた生産量を元にまた消費が拡大する⇒でもってまた生産が拡大する・・・。こういった循環論をバシっと理論的に説明してるのが経済学の骨子なのである、という話だった。

このスパイラルをソフトウェア業界にあてはめてみる

そのスパイラルの仮説を考えてられているのが、このエントリ。

実はパッケージソフトウェアによってカバーされている領域はまだまだ限定的で、企業が使っているソフトウェアの多くはカスタムメイド(システムインテグレーションサービス)に依存しているのではないか。

そして、パッケージソフトウェアの市場というのは、「以前はカスタムメイドだったものの標準化・テンプレート化」の繰り返しによって成長してきたのではないか。

この仮説を元に議論を展開していきたい。

多分こういうスパイラル

パッケージソフトが自己拡大していくスパイラルを、簡潔に考えてみた。

パッケージソフトが世に出る⇒大企業を中心に採用される⇒できること、できないこと、今後すべき事などがフィードバックされる⇒パッケージベンダーは業種・業態を吟味して、できる限り横串で適用できそうな標準化を図る*2⇒従来製品では対応できないニーズが生まれる⇒そこを狙ってパッケージ化で提供する企業が現れる⇒淘汰の果てにまた新たなパッケージのネタが生まれる⇒新たな機能を搭載したパッケージが作られる⇒・・・

で、そのコアにあるのは、先ほどのエントリのコメント欄に書いてあるはせがわ氏のこの記述ではないかと思う。

業務プロセスは時間の経過とともに変化する。

業務とシステムが独立して存在し、ソフトウェアが現状の業務に寄って行ったとしても、100%のカバー率というのは考えにくく、かつ時間の経過で業務自体が変化して行くので、このスパイラルは変わらないのではないかと考えています。

結局、パッケージでやろうとしていることは業務ではなく実作業だから、ということに起因する。

業務というものは抽象化された概念にしか過ぎない。実際は実作業の組み合わせ。標準化を図ろうとすれば、この実作業の大枠しか決定できない。例えば見積を取るにしても、業務としては1つ。「見積を取る」という業務。でもその実際どんな作業やってんのよ?って話になったときに、果たして「実作業レベルまでパッケージの標準機能と瓜二つ」な会社が何社あるのだろうか?

パッケージを導入しても固有のプロセスが生まれるワケは、ここにあると思う。

でもって、業務プロセスが時間という必ず変化するファクターによって*3変化するので、元々業務プロセスと関係の無いシステムがそれにつられて変化を余儀なくされるのは当然のことである。

標準化と固有化のあいだ

ここで、物理学的に螺旋、スパイラルが生まれるということはどういう状態か、というのを考えたい。

物理学的に螺旋というものが生まれる訳は、振り子の定理と同じです。ある方向へ向かおうとするエネルギーと、その逆方向へ向かおうとするエネルギーが同じで、安定した距離で点を中心として行ったりきたりすることです。ここで面白いのが、対になっているものが距離をとって螺旋ができるということ。

これを、「標準化」と「固有化」がある一定の距離をとって振り子のように揺れることで、パッケージビジネスが拡大しているのである、と説明するとマクロ的にはスッキリまとまるかなーと思います。

*1:山形氏がボコボコに斬り捨てているのが多少気になる…

*2:細かい所をいちいち拾ったらキリがない、スケールメリットを活かすのが合理的だろうと判断

*3:正確には社会環境だろう

SQLを学習できるWebサービスを作りました。