ちょっと煽りっぽいタイトルで失礼しますw
月刊ソリューションITという雑誌に、Salesforceの特集が組まれていました。多少ヨイショ記事の部分は否めないんですが、それを鑑みればとてもよくまとまったよい記事だと思います。
この記事を読んで一番最初に感じたことは、SaaSの最も破壊的な所はシステムをそのまま外部から調達することができることにあると言うこと。NTTデータやNSOL等がSalesforceをやっているようなのですが、これってかなり自己否定してるよな、と思う。我々SIerの収益源は構築サービスです。でもSaaSという形態では「構築する必要が無い」のがメリットです。構築してナンボのSIerが、構築しないことを是としているサービスを担いで商売をするという、よくわからない構図がそこにあります。
SIというビジネスモデルが今あるのは、少なくとも2つの側面があると思っている。1つは日本企業がみな独自の業務プロセスを持っていること。バリューチェーン、つまり上位概念では同じなんだけど(例えば流通なんて極論すれば仕入⇒物流⇒販売ぐらいなもんだ)、どの業種もオペレーションレベルのプロセスが同じ会社なんて見たことが無い。システムは業務プロセスに組み込まれるものなので、その業務プロセスが企業毎に違うんだから10社作ったら10通りのシステムが出来上がる。つまりビジネスになる。
永らく日本の大企業は「お客は自分ちで欲しいものが欲し」がった.これは多くの産業で,業界内での同業他社との競争が厳しく,企業ごとに異なるかたちで業務プロセスが洗練され,それが同業他社に対する差別化要素となっていたからである。
(略)
けれども環境は大きく変わりつつある.団塊の世代が引退することで,他業界でもIT産業でも恒常的な人手不足が続く.資本規制の緩和で業界再編も急ピッチで進んでいるし,雇用の流動性も高まりつつある.今後は統合の容易な標準システム,中途入社でもキャッチアップの容易な共通のワークフローに切り替えていくことが,経営上も合理的となるだろう.
非常に納得がいく指摘。
もう1つは、システムを作ることそのものが複雑怪奇であるということ。これはオープン化によって恐ろしく加速されたように思う。とある外資系ソフトウェアベンダーのCEOが「この30年でハード、メモリ、ストレージ、ネットワークのコストは錘がストンと落ちるように激減したけど、ITに関するコストは増える一方だ。」という趣旨の発言をしてた。その原因は「システムを作ること」に多大なお金が流れているからではないか、と。この30年でITシステムで賄おうとする範囲というものが10円玉から日本国土ぐらいの大きさになってしまい、そのスコープを埋めるのは機械ではなく人間だった。ヒトが動く以上お金も動く。故にITコストは増大する。
しかし、この2つの側面を一気に破壊してしまう可能性を秘めているのが、SaaSというシステム形態なのではないだろうか?
私はちょっとSalesforceを触ったことがあるのだが、あれのウマい所は「入力する所は必要最低限且つ必須のものに絞り、アウトプットは多種多彩」にしている所だ。営業ってつまりは「引合⇒見積⇒契約でしょ?」という前提の元に、入力する項目はどの営業プロセスにも必要だけど最低限で済むようなものを用意する。後は御社のルールに従って細かい所をカスタマイズしてお使い頂けますよというやり方。この巧妙なやり方には舌を巻く。カスタマイズが求められる所とそうでない所の棲み分けが絶妙だからこそ、3万社近い導入実績があるのだろう。
Salesforceが目指す次の世界は、業務プロセスの設計を容易にするサービスだろうと思っている。営業プロセスのようなカスタマイズ性の高いエリアのオペレーションをせっかくSaaSという形態で握ったんだから、次は業務改善・洗練・共通化・効率化などを行えるようなプラットフォームになろうとしているのではないか。営業プロセスってもっと奥に踏み込むと、事業運営プロセスでもある。事業運営プロセスのプラットフォーム化をSaaSでやろうとしているんじゃないだろうか。
となれば、プロセスの独自性を飲み込んで尚且つ構築しなくてもシステムを持ってこれるSaaSというモデルの潜在的破壊力が恐ろしいもので、既存のSIというモデルを吹き飛ばすに余りある力を持っていると思わずにはいられないのです。
結局のところ要件定義や仕様書に基づいてシステムをつくるという仕事は,ITが生む付加価値そのものを受け取るようにビジネスモデルができていないのだ.技術や製品・専門知識に希少性があった時代はそれでも儲かったが,ハードやソフト,それらに対する知識がコモディティ化した瞬間,サービスやソリューションそのものがコモディティ化することは避けられなかったのだろう.
時間軸は分からない。だけど、System IntegrationからService Integrationの流れは加速していくと思います。