先日、アジャイル開発を推進するために大変有意義な資料が公開されています。ESMの木下さんといえば、アジャイル開発の現場にずっと携わってきた著名な方です。
でも、令和2年にこちらの記事が何百もはてブされるのも、おいおいマジかよって思う所がありまして。今までどうやってたのだろうか...。準委任(時間単位のチャージ)以外の選択肢がないやり方だと思っていたので。請負でアジャイルを取りに入れるわけないですよね。一般的なSIerさんでは、どういう理解をされて、どう取り組んで来たのだろう。
アジャイルと受託開発の相性は最悪では
ムービング・ターゲットを請負で追いかける自傷行為を誰がやるんだって話と、要件固めて下請けに出せないから誰もやりたがらないよねという話を書き散らしています。
10年前に書いた記事の内容がまだ通用してしまうのも、自分でも少し寂しい気持ちがあります。
日本のIT業界の未来はSESが切り開くのである
ガイドラインによれば、ビジネスモデルとしてはSESですよね。内訳が個人単位・サービス単位なのかは知りませんが、単価と工数を見積を出して作業委託という体になりますし。レベニューシェア的なモデルは絶対無理だと思います。仮説検証段階で何のレベニューが見込めるのかという単純な話で。DXの実現にアジャイルのプラクティスが必須で、そのための契約スキームは準委任がベストって話を大きく言うと、SESが正義であると聞こえます。
「SESは死ね」派の皆さんはこの動きをどう考えるんでしょうか。「人月商売のIT業界ははっきり言って、まともな産業ではない。」「日本のIT業界のためにSESは消滅するべき」という意見ありました。良いSESと悪いSESがあるのです、みたいな話になるのかなぁ。ダブスタ感が。
ITで達成できる選択肢が格段に増えたことでビジネスゴールを設定する事自体が高度化するので、「双方が同じコンテキストを共有して要件定義をしないと成果出せません、そして、価値を決めるのはユーザー側!イニシアチブを取ろう!」は100%同意です。それがいかに難しいかは、受託開発の現場で奮闘される皆さんにはお分かり頂けると思います。
POを立てられる会社がどれだけいるのだろう
DX実現のための仮説検証型アジャイル的な取り組みで最も難しいのが、ユーザー企業にPOが立てられるかどうかだと感じました。ハイスペックな人材がPOとして立ち回らないと成果出せませんよね、これ。ビジネス要件もシステム要件もどっちも策定・判断・意思決定できるような人材が、失礼ながらITが本業でないユーザー企業に潤沢にいるだろうか? ITプロジェクトを切り盛りした経験がない・要件定義をやったことがない人が大多数だと思います。
エンジニアを育てることには皆さんやっきになってますけど、POを育てるみたいな話ってアジャイルに造形が深い方々の間でどんな議論をされているだろう。PdM(プロダクト・マネージャ)に集約されるのかな。
自分の理解ではボトルネックになるのはITエンジニアじゃなくてPOだという理解なのですが、違うのだろうか?違ってたら追記して直すので、こっそり教えて。 ガイドラインの策定に貢献された木下さんのnoteにも以下のような記述があったので、自分はそう感じました。
ユーザ企業の担当者が忙しくPOを立てられない場合があるのではないかというような意見もあがったが、そもそもそういったケースではアジャイル開発をスタートしてはいけないのではないかというところに落ち着いた。
IPA の アジャイル開発版「情報システム・モデル取引・契約書」|木下史彦|note
このガイドラインを是として推進をされる現場の方には、「正しくプロジェクトを切り盛りするPOを俺たちが育成する、そういうロールを作る」という方向での議論を盛り上げて欲しいです。エンジニアがいくら頑張っても、ITプロジェクトの成功の是非は価値をデザインするロールの人たちの動き方で決まってしまいますよ。