展望2020年のIT企業というシリーズ企画の記事を、たまたまTwitterで見かけました。
この記事で語られるDX(デジタルトランスフォーメーション)ってものすごいオワコン臭で衝撃を受けました。汎用機をお守りする時代は終わった、これからはオープンなWeb技術を駆使して基幹システムではなく顧客の売上を支えるITを作るのだ、SO!それが!DX時代! みたいなノリで書いてあって、1ミリも次世代感が無い。
生きている時間軸が違うんだなと思いました。
DXの妨げは社内システムにあるらしい
色んな定義をされているDXですが、ここでは経済産業省の提唱する「DXレポート」のサマリー版に書いてある問題点とDX推進のためのシナリオみたいなのを引き合いに出します。
DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~(METI/経済産業省)
簡単に言うとこういう主張です。
- モバイルやWeb技術を駆使してサービスを作り新事業を立ち上げる。皆がこれをやる時代。それがDX!
- が、DXの足かせになっているものがある。社内システムだ。地獄でしか無い。
- 乱立するシステム群によるスパゲティ状態で、全社横断的なデータが取れない
- 高度なカスタマイズとレガシーな技術を使う為に運用コストが肥大化
- DX活用のためのデータが一切取れないじゃないか!
- 既存システムを刷新しその上でクラウドに乗っけてAIとかでいい感じに!
企業の強さはオペレーションによって決まる
この関係性が理解できないと一生DX無理なんで、マジでわかってほしい。
どんなにITに金を突っ込んだ所で、現場のオペレーションが変革できなければ意味がないのね。動かないコンピュータの本質はここ。現場が使うのは紙とペンじゃないですよね、何かしらのシステムとそれをサポートするツール。ITを入れるだけ入れてもしょうがなくて、使い方を工夫しないと何にもならない。
この手の話になると、「カスタマイズはもってのほか、色んな会社で使われている効率化がされたパッケージに業務を合わせる、これがベストプラクティス」というクソが出てくるのですが、大きな間違いです。これが出来るのは定型的な業務(総務系)だけ。いい加減に目を覚まして欲しい。
社内システムは業務内容によって決まります。業務は、自社が行う事業によって決まる。事業は需要と顧客によって決まる。つまり「顧客 >> 事業 >> 業務 >> 社内システム」という従属性があるわけ。どの会社でも。
で、事業運営上必要な業務が社内システムになかった時に、「あーうちのITシステムがアホなのはしょうがない。この顧客を取りこぼす、このニーズや売上はいらんわ、それが健全だもんな」という話になるかといえば、なるわけないでしょ。なぜExcelで頑張るのかという理由の9割ぐらいは、ここだと思うよ。
売上を上げるまでのプロセスは、非定型的な業務も多くあるし、顧客や商材によってオペレーションも変わる必要がある。時代が変われば需要が変わって顧客も変わる、それに追従するためのDXではないんですか??
だとしたら、死ぬほど地道にオペレーション設計をするしか無いと思います。サービスや商材はパクれますけど、オペレーションはパクれないんで。自社独自のオペレーションこそ、企業の競争力を生み出す源泉だと僕は信じています。それを支えるためのITをどう作ればいいかという方向で、社内システムのあり方を考えて欲しい・・・!
本当のDXはITありき
僕がDXをやるとすれば、「IT >> 顧客 >> 事業 >> 業務」で考えます。ITありき。え、こんなふうにITを使えばこんなサービスが出来るよねで始まり、ITありきでコンセプトを作って、そのコンセプトにハマるニーズと顧客を作り出して、事業化する。これが本当のDXだと思うんだけど、どうです?
IT企画が出来る人がいないと始まらない
どんなに優秀なエンジニアを抱えていても、どんな価値を提供してかつそれが自社のリソースで実現可能なシステムの形を与えることが出来なければ、意味がない。プロダクト作るのにプロダクトの仕様が決まってなければどうしようもないのと同じで、「経営もしくは業務課題を解決するために必要な、業務や事業をより良くするためのITシステムの企画立案」ができるIT企画屋さんが、圧倒的に足りていないと思う。業務向けとか個人向けとか関係なくてさ。
その点を無視してCOBOLエンジニアをオープン系に!とか言ってる段階でDXの時代なんて来るわけないので、無関係です。安心してくれ、と。
エンジニアのキャリアチェンジの方向性としても面白いと思っているので、僕はこっち側に仕事内容をシフトしました。仲間が全然いないのでちょっと寂しいですが、この道も面白いと思うのでご一考下さい。