みんな死にかけるかもしれないよ。
ひがさんのSI業界からはさっさと抜けだしたほうがいいを読みました。SIには未来が無いという最後通告のような文面のようにも取れます。江島さんのニッポンIT業界絶望論と併せて読むと、言わんとしていることの輪郭がより鮮明になるかと思います。ご一読を。
非効率極まりない下請け構造でシステムを作る時代が過ぎ去り、プロがはじめから高い品質を提供できるSaaSの時代が到来しているよ、と。ユーザーは必要最低限の投資で済む為、よりスリムで堅牢な企業体になる。IT屋も全部自分で出来るしお客さんが喜んでくれて嬉しいよねというWin-Winなシナリオ。
これが仮に未来像としましょう。そうすると、ちょっと考えれば分かる。ITのサプライサイドにとっては、本当に難しい時代に入るってことが。SaaSの時代というのは、僕ら業界にいる人間にとってみれば「多産多死の時代」ではないでしょうか?変化の中で生き残っていかねばなりません。
SaaSの時代は技術がコモディティの領域に近づくことを意味します。となれば、どう考えてもあるものが大きく下落します。お分かりですね。価格です。OSS等により要素技術は誰でも手に入っちゃうので、リスクを取って本気でITを活用しますと劇的にコストを下げることが出来ます。見積もり2億円のIP電話を820万円で構築する事例なんかもあります。
「これからシステムのあるべき姿が変わり大幅な価格低下が起こるなかで、本当に今の企業体を維持できるんですか?大手に食われないで生きていけますか?」
というのがまず1点。
2点目は、スイッチングコストが低下する問題です。
SaaSでの提供は効率はよいかもしれませんが、使い手から見たらすぐ辞めることが出来ないとメリットが生まれません。TVのチャンネルをコロコロ変えられるように、僕らのサービスもコロコロ変えられることを容認する必要があります。受託だと基盤つかんでますから、エネルギーが必要なのでそう簡単にはいかない。
スイッチングさせない要素を、どこで生み出せるのか。同じモノは2つも要りません。Webサービスの世界を見てみても、同じモノ同士が叩き叩かれしのぎを削って今があります。それが無いのにSaaSだクラウドだと言ってもすぐ死ぬと思います。これが2点目。
3点目は、SaaSの形態で解決できるビジネス課題がどれだけあるのか、という問題です。
現時点でSaaSというのは、ごく一部のビジネス課題しか解決できていません。悪い事ではないんですが、受注業務がSaaSで提供できても、在庫管理業務が提供できなければ、ユーザー企業に取って別のデメリットが生まれるだけで劇的な効果はありません。連携するのは大変なので、限定的な使い方が多くなるでしょう。
「特注のぽんこつ車を作れば非常に高くついたかもしれないが、少なくともライバルより優れたアーキテクチャを作るチャンスはあった。でも、タクシーの捕まえ方に差など出ない」
やっぱ、ニコラス・カーのこの言葉は的を得ていたんだなと改めて思います。分かりやすく言うと、僕らはタクシーの運転手のようなもんになるってことですよ。今後益々、ね。SaaSを推進するってそういう事でしょう。
で、あるならば何をしなくてはいけないのか。個人レベルではひがさんのいうように、ハイブリッドを指向するのが良いと思います。アメリカではMBAだけどプログラマってのはゴロゴロいますから。
Are You Ready for Big Switch?