GoTheDistance

ござ先輩と言われています。(株) クオリティスタートという会社をやっています。

2006年パ・プレーオフ、9回裏の攻防について

日ハムの優勝に、プレーオフの女神が微笑みました。今年はドラマティックなムーブメントがあったなぁ。

しかし、見ているほうが辛くなるのがソフトバンクの斉藤和巳投手。間違いなく日本最高の投手。今年に至っては投手5冠の大記録を達成している。どうもテレビ受けする派手さがないためか、それとも別の理由なのか、かなり扱いが小さい。上原、松坂よりもずっと格上の偉業を成し遂げているのだが。

そんな斉藤投手だが、プレーオフの女神には本当に相性が悪いとしか言いようがない。まるで磁石の同極が向き合っているかのような、運の乖離を感じる。3年前のあの敗戦からそういった流れを、チーム全体が引きずってしまったのだろうか…。

斉藤が登板した2試合は、両方とも0−1で敗れている。普通こんなことは起こりえない。調べてみれば、レギュラーシーズンで斉藤が連続して0−1で負けたことなどないはずだ。

斉藤投手は割れんばかりのアゲインストの大歓声の中、たった一人で相手打線に仁王立ちしてきたのだ。今年のプレーオフはずっとアウエーにも関わらず、登板した試合の失点はわずかに1失点。誰も斉藤を責めることなどできない。

この隠れた斉藤投手の強さには、本当に心打たれる。それを目の当たりにしているから、松中を代表とした野手陣も本当に辛いと思う。エースが踏ん張っているのに打線が応えられない辛さと焦りと自分への怒り。オレたちが打っていれば、こんなことには…。絶対この気持ちがあるはずだ。

恐らく、斉藤投手が自分で最も悔やんでいると思われるのが、9回裏の先頭打者森本へのストレートの四球だろう。

先頭打者を絶対に出したくないという意識が強く働いたためか、非常に慎重な入りだしになった。明らかに通常の組み立てではなく、一発でたらその場で終了の組み立てだった。初球のカーブ、2球目のスライダー共に外れて迎えた3球目。斉藤は首を振って外角にスライダーを投げた。恐らく捕手のサインはストレートだったはず。思い切りストレートを投げていれば、恐らく森本は手を出してカウント1−2になっていた。斉藤はあの場面でスライダーを投げて結果は0−3になってしまった。その後力んだのか、アウトコースのストレートが大きく外れて四球になってしまった。

結果から言えば、そこから全てが始まってしまった。

流石に2死まではこぎつけたのだが、稲葉に投げた2球目のフォークが少し甘く入った。体が開いていた感があり、膝元を意識して投げただろうフォークが外角のストライクゾーンに流れて落ちていった。そのボールを、元々ローボールヒッターな稲葉がバットの芯の近くでセンターにはじき返した。稲葉もうまく打ったし。この時点で「勝負あった」感はあった。

しかし、ソフトバンクの中沢二塁手も好プレイでよくあの打球を抑えた。正直私はセンターに抜けたと思った。あれ自体は間違いなくファインプレイ。抜けたら90%終わってた。

センターに抜けるであろう打球が飛んでくれば、セカンドにバックハンドに近い形で投げてしまうのは致し方ないこと。解説の川崎憲次郎氏の言う通りだろう。

非常に酷だけど、結果として直接的な敗因となったのは、ショートの川崎選手がセカンドベースに送球するようカバーリングしたことだ。

1点失えば負けという局面でセカンドにランナーがいる。そして、セカンドはセンターに抜けるかという場所に球が飛んだのだから、川崎選手はセカンドの捕球の段階で森本の位置を確かめて、下記の4択をしなければならなかった。

  1. セカンドにバックホームの指示を飛ばす
  2. 自分に投げてもらって自らがバックホームをする
  3. セカンドで殺す
  4. ファーストで殺す

この4択から何を選ぶかが彼の仕事だった。

結果としてセカンドフォースアウトを狙い、残念ながらセーフになってしまった。

セカンドフォースアウトでチェンジとなる局面で、バックホームを要求するのはあまり無い。サヨナラがかかっていてもだ。すぐ近くのベースでアウトを取って決めたいと思って当然だと思う。あと1アウトでチェンジになる中で、目の前でセーフになろうかというランナーがいれば、刺したくなるのは人情と言うもの。あの局面で冷静に判断しろというのも、酷かもしれない。川崎選手の目が赤くなっていたが、当然セカンドで殺せなかった自分を責めていたに違いない。

エースで勝てなかったソフトバンク、エースで勝利した日本ハム。非常に僅かな差だったけど、非常に大きな重みがあった。これだから野球は怖い。

たった1回の攻防で、これだけのドラマが野球には隠されている。やっぱり野球はすごく面白いとスポーツだと思う。