GoTheDistance

ござ先輩と言われています。(株) クオリティスタートという会社をやっています。

オープンソースとプログラマーのジレンマ

ちょっと前にPOSTされたNicholas Carrの下記エントリが面白かったのでご紹介。

まずは問題提起

Is open source software development good or bad for programmers?

これが問題提起です。

OSS貢献によるeconomic standing

But knowing that an individual coder has rational incentives to contribute to open source development doesn't tell you whether or not open source improves the economic standing of programmers in general

個人的にOSSを行う理由はわかったとしても、一般的に、OSSがプログラマ個々人の経済的地位を改善することにはならないよね、という展開をしています。

SAPのリサーチャーの理論展開

じゃあ、ここで先ほどあげたプログラマ個々人の経済的地位改善との関係を、SAPのリサーチャーであるDirkがこんな論理展開をしています。それをフォローしていきます。

He first looks at why big systems integrators and other "solutions" providers, like IBM, have been promoting open source.(中略) They like open source because it allows them to reduce the amount of money they have to pay to software vendors without requiring that they pass along the savings to customers in the form of lower prices.(中略)Ultimately, that means that open-source software developers are subsidizing the big solution providers at their own expense.

第一に、なんでIBMのような巨大SIerなどがOSSを推進するのかを考える。IBMなんかはOSSが好きなんだ、と。

なんでか?

OSSで開発すればソフトベンダーに払わなきゃいけないお金を減らすことが出来るので、顧客に低価格で提供できるからではないか、と。究極的には、OSSの開発者は自腹を切ってIBMのような巨大企業を助成しているんだと。自らの活動がIBMに助成金を与えて援助をしているんだと、そういうことじゃないか、と言っています。

確かこの議論については、JBossの偉い人が似たようなことを言っていた。OSSを企業プロダクトの墓場にしてるんじゃないか、と。OSSプログラマの見識をそのまま取り込もうとしているんだと、とんでもない野郎だ、的な話。

「BEAとIBMはコミュニティが作ったOSSを『露天掘り』で手に入れ、クローズド・ソースのプロプライエタリ製品と一体化する戦略を進めている。この一体化をBEAは『blending』と呼び、IBMは『bluewashing』と呼んでいる。OSSコミュニティはこのことによって恩恵を受けないが、IBMとBEAの株主は確実に利益を得ている。たとえば、OSSプロジェクトのAPサーバであるApache Geronimoをベースにした、IBMのWebSphere Application Server Community Edition(WAS CE)が正にその実例の一つだ。Geronimoが露天掘りによって有益なところをすべて採掘され、他のソフトと組み合わされて、『bluewash』されたのがWAS CEだ。」

つまりOSSで提供された機能を「そっくりそのままGETだぜ!」行って、自社製品にパッケージ化するという・・・。こすいといったらありゃしないビジネスモデルをやってるんだと。

これは非常に面白い指摘だと思う。

OSSがプログラマの職を奪う

そんなことを言ってるんですよ、このDirkさんというリサーチャーは。

He argues that, by tearing down the barriers to entry in software markets (by obviating the huge up-front investments required to create a proprietary program), open source spurs competition, which in turn reduces prices and erodes the profits of software vendors.

ソフトウェア市場に参入する障壁を下げること、つまり、クローズド・ソースの製品を作るために要求される巨大な投資しなくても良くなると、OSSは競争を促進するだろうと。そうなるとソフトの価格は下落して、ソフトウェアベンダーの利益を侵食するだろう、と。

ここまでは、良い。

カスタマーも値段が下がるのでハッピー。SIerもクローズドな製品が締め出せてハッピー。

だが、プログラマはどうなんだ?、と考えると・・・

For the programmers themselves, however, much of the savings reaped by customers and added profits taken in by integrators comes out of their own pockets.

そういったカスタマーの値段downやSIerのメリットなんかは、プログラマー自身の財布から来てるんじゃないのか、と。それにOSSが普及して更にソフトウェア業界のシェアを高めたとしたら、プログラマー自身の競争が激化しちゃって、更なる格差が生まれてしまうんじゃないか、と。そういう理論展開をしています。

Programmer's Dilemma

最後に、Nickがこのようなまとめをしています。

Because skills in open source programming are increasingly necessary to enhance the potential career prospects of individual programmers, individual programmers have strong motivations to join in - and as more programmers join in, the incentive for each individual programmer to participate becomes ever stronger. At the same time, the total amount of money that goes to programmers falls as open source is adopted by more companies.

OSS開発ができるスキルは、個々人のプログラマのキャリアの見通しを広げていくのにますます必要になってくると。プログラマがOSSに参加するインセンティブやモチベーションが明確にあるので、多くのプログラマがOSS開発に参加することになるだろう、と。だが、プログラマに落ちてくるトータルのお金はオープンソースが多くの会社で採用されていくことで落ち込んでいくだろう、と。腕を磨くことで自分の首を絞めてしまうのではないかというお話でした。