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GoTheDistance

ござ先輩と言われています。(株) クオリティスタートという会社をやっています。

ITを活用できる組織を増やす為に必要なこと

システム開発

Publickeyさんで特許庁の基幹システム問題が取り上げられています。今回の件はどう考えても特許庁の体制が根本的な原因なので、TSOLが50人を1300人に増やしたことを槍玉に挙げても不毛だなと思っております。

特許庁の基幹システム失敗の背景にある、日本におけるITプロジェクトの実態 - Publickey

この辺のITのメディアの言説は大抵「なぜXXXプロジェクトは失敗したか」的なざっくりとした問題提起なのですが、失敗にも色んなケースがありますので、本来はそれらを因数分解して細部を議論しなければ教訓は得難い。後に残るものは、ワイドショーレベルの非生産的な言説をみのもんたが茶化すぐらいの微妙な空気ですか。こういう言説がIT業界のイメージダウンに繋がっていることを認識してもらいたいものです。Publickeyさんみたいに、生産的な言説が増えていかないといけない。そういうITのメディアを作っていきたいものです。

で、上記エントリにある「萩本氏の指摘するIT業界に巣食う本質的な問題」を解決する為に必要だと感じたことを、書いていきます。

萩本氏の指摘を一言で言うと「オーダーしている人間が、何をオーダーしているのか理解していない」ということです。この問題を考える時には、注文住宅とのオーダーと対比すると理解しやすいです。

注文住宅の設計書は図面だから、出来上がってくるものが図面通りに出来る。工法の詳細は知る必要は無い。チェックポイントも限定的なので、お互いコミュニケーションが取りやすい。しかし、ITのシステムにおける設計書は料理のレシピに良く似ている。レシピを読んだ所で、自分が望む料理になるかを判断するためにはレシピの作り手と同等の専門性が必要となるので、情シス部門ならまだしもエンドユーザーは口に入れないと正しく判断することが困難になる。「トマトソースのパスタ」って料理を注文して「口に合わないから下げろ、これはオレが頼んだものではない」という発注者の言い分が、まかり通ってしまう。注文住宅で「とりあえず家を作ってよ。住んでから検収するから」っていうのは通らないけれど、ITの場合は往々にして通ってしまうのは、この辺のズレに問題があると常々感じています。

萩本氏は上記のような問題を生む工程は不要にすべき(=仕様書は発注者が作るべき)と考えつつも、人月で食ってる現状を考えるとSIerからしたら仕事を失うことになるのでベンダーが変わることは無理があると指摘されています。正論を言えば、ユーザーは要件定義書や仕様書を精査する必要すら無くできあがったシステムだけで良い(=料理の作り方を知る必要は無い)けれど、オーダーメイドだとそうもいかない。料理は食べたら終わりですが、システムは出来てからが始まりです。プログラミングファーストな作り方で提案するベンダー様も増えてきているのですが、まだまだ小数派。

この辺のズレを埋める為に要件定義を行うのですが、埋められる溝には限界があります。仕様書をベンダーに作ってもらうのではなく自分たちで作成してベンダーに発注し、もっと正確なオーダーを出せるようになるしかない。これが正しいとすると、仕様は業務とITを理解している人間が策定しなければならぬっていう理屈になるのだけど、そのITをコードレベルで把握できるエンジニアがいないなら結局ダメになる確率が高いので、エンジニアを事業会社でもっと活用すべきだと4年ぐらい前からずっと主張しているのがこちらのブログになります。

ま、ぶっちゃけ正確にオーダー出来ないのならベンダーに安易に頼んじゃいけないんですが、提案依頼をされているベンダーの立場とすればそんなこと言えませんよね。営業しにきてるんだし。僕はそんなこと知ったこっちゃないんで、いくらでも口を出しますよ。

受託開発を正しく執り行うには、ある一定レベルのITリテラシーが必須なのでリテラシーが無いユーザー様は安易に業者に発注しちゃダメなんですよ。ハッキリ言っておきますね。そこを認めることが出来ない組織はITで何をやっても大抵失敗に終わります。ベンダーは発注者の期待に応えたいし時には超えようともしていますが、レシピがグダグダならどうしようもありません。「こんなグダグダなレシピでは仕事請けられないです」って言ったベンダーがもしいたら、そのベンダーとは仲良くしておきましょう。信頼できます。

レシピと図面の問題に戻りますが、それを解決するキーワードがこれ。「ITリテラシー」です。ITリテラシーがあるという言葉の意味は、ITシステムで出来る限界を知っているということです。その限界を知らない方への啓蒙活動が本当に必要なんだなと強く感じています。草の根活動として。

ITリテラシーを身につける方法は1つしか無い。自分で手を動かす。それだけです。文章を自分で書かないのに読み書きが出来る訳が無いのと同じです。

今やっている業務を、「自分たちで」ITを使って行うこと。中小企業ならOfficeソフトで充分。Excelで回せる仕事は山のようにあります。そして、Excelの限界に気づく時が来ます。そこが分水嶺でして、ITの限界を知って初めてITは業務の役に立つようになるんですね。その限界を埋める為に仕事の内容をITにフィットさせる意義が生まれ、ITシステムがもたらす効用を吟味できるからです。そこを考えている経営者が少ないのも事実。そこもある意味IT業界の本質的な問題かもしれません。

動かないコンピュータ的な話ばかりが先走りするのは、IT業界の未来に何の希望も与えないと思っています。この仕事をやってる人間が社会的にも意義があることなんだって話を、もっと増やしていきたいじゃないですか。動かないコンピュータのなすり付け合いの結果に残る「業界に巣食う負の構造を認識してない or 丸投げしてる顧客がダメ」対「負の構造があると認識しているのにそこから抜け出せない業者がダメ」っていうエゴのぶつかり合いを超えていかねばなりません。

取り急ぎ、僕に出来ることはITの限界を知らない方にその限界を啓蒙して、ITを武器にしてもらう手助けをすることかなーと思っています。

Think Globally, Act Locally!