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ござ先輩と言われています。(株) クオリティスタートという会社をやっています。

人月を超えるエンジニアリングの未来

ご無沙汰してしまっているmark-wadaさんより問題提起を頂いたので、最近話題になった「超高速開発」と絡めて書いていきます。

僕のエントリに対する和田さんのご指摘をまとめると、ソフトウェアを作るにあたっては上流と下流の断絶があるのはマイナスなのは理解できるし、コードを書く時にはその断絶があると望むものを作ることは出来ないのも確か。だが、システムを作る時にはそもそもレイヤーをもう1つ上に上げるべき。スクラッチでコードを書く必然性など無いのだから、SaaS/PaaSのビジネスの流れを鑑みても、業務システムのデザインを元にソフトウエアを組み合わせれば良いはずで、上流と下流は密接に繋がってしまうとマイナスですらあるということ。

何故マイナスかと言いますと、スイッチひとつで洗濯機が使える時代にたらいに水はって一から手で洗ってたら工数ばっかりかかってしまい、デザインの部分で価値を出せないので独自性が無い上に価格も高くなり、業者もユーザーも良いこと無いのではという意味です。この壁を超えない限り人月商売を超えるのは無理ですよね。

僕は超内製回帰派ですが、最近著名なミドルウェアベンダーのトップの方に話を伺って少し驚きました。ITを使いこなしている会社は、プログラマレスな傾向があると。プログラマがコードを書いてソフトウエアを書く必要などない、業務がデザインされていればソフトを組み合わせて使えば可能なはずと考えている。専門性が高く定型的な業務はパッケージで、それ以外のシステムは自分たちで使える「システムを構築するための開発ツール」があればいい。高度に内製が進化すると、情報システム部に現場の直接部門の人間を入れてそこで業務システムを作ったりメンテしたりしているそうです。業務システムを作るのに必要なのは業務ルールの策定(=要は仕様)だけになりかねませんね。

記者の眼 - あなたの知らない超高速開発:ITpro良品企画の内製化事例って結構シンクロしてます。開発スピードを高めるなら業務をデザインする人間の思考を元に自動生成するしかないだろという意味で、同じ方向を向いています。この流れが加速すると面白いです。人月から脱却できるひとつの有力解なので。この手のツールをビックバン導入することはあり得ないので部分的な適用になるんでしょうけど、スモールスタートでアジャイルなプロセスをイケてるエンジニアがイノベートするリーンスタートアップでローラもケーオツですね。

そんな単純なもんじゃないと思われるでしょうけれど、複雑なものを単純にすることがエンジニアリングの価値でしょう。僕は単純なもんじゃないという言葉は大嫌いです。複雑なものを構造を与えて単純にするんです。それが設計じゃないですか。

ただ、このようなPaaS的なツールは自分たちの手でITを進化させることに必然性を感じない多くの会社には猫に小判で、これを使えば売り上げが上がるという類いのものでもないので、そこが難しい所。既製品のほうが効能が分かりやすい。哀しいことに中小は売り上げが無いのが問題なので、ITシステム導入すれば解決できる・・・わけないですねw ITに払う対価が何なのかを自分で定義できない会社はゴマンとあるのだから、そこを補完する営業戦略をこれからのSIerはより一層必要になると思います。

事業のイノベーションを生み出すのは技術ではなくリソース(経営資源)の再配置なので、ミドルウェア的な位置づけのクールなソフトウエアを作る正統派ギークもいいけれど、他人の会社のシゴト/経営手法に関心があって事業の再構築が大好きなギークの台頭が人月を超えるエンジニアリングを生み出してくれるような未来を、追いかけていきたいです。