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ござ先輩と言われています。(株) クオリティスタートという会社をやっています。

IT部門と経営の溝を埋めるために必要なたった1つのこと

もう何周目になるのでしょうか。「情報システム部門が経営に貢献できていない」というこの手の話は。

システム部門再生 - 経企部門が吐露する「システム部門への不満」:ITpro

なんか色々ダメだしされていますが、重要なポイントは1つだけです。システム部門がビジネスに貢献するためには、自社の事業に対する理解が必要なだけではなく、その遂行手段である業務プロセスの理解が必要だ、という圧倒的な事実があることだけ。WhatとHowはクルマの両輪だと。で、この手の問題はシステム部門の問題ではなく経営の問題だという水掛け論が水びだしになるまで色んな人にされてFUDが残るのも味わい深いポイントであります。

自分達で管理できないものを改善できるわけが無い

システム部門が業務プロセスの改善に貢献できない理由。突き詰めれば1つだけです。自分達で管理できずに、安易に外部に投げているからです。管理できないシステムをたくさん持っているからどのシステムをどう改善すればどの業務がどう変わるのか、それを誰も議論できません。どこから手をつけて良いかも分かりません。報告を受けてちょこちょこ動くのが関の山です。

で、その先はどうなるかと言えばこうなります。

「それで結局のところ、アウトソーシングをした本当の理由は何ですか」。
ほとんどのシステム責任者は、筆者の質問に反応し、答えてくれた。答えは皆同じであった。
「本当の理由ですか。人です。私の次の世代が来たら、自力でシステムを管理できません。後輩の能力の問題ではなく、そもそも人数からしてまったく足りないのです。IT企業としっかり契約を結んでシステムを維持してもらうしか手はありませんでした。」

記者の眼 - 2011年版「あえて今、『システム内製』の勧め」:ITpro

こうなったらもうどんなに経営がわめいても無駄です。Whatをいくら騒いでもHowが破綻してしまえば、Whatだけが宙に浮いて受け取った人間が爆死する構造になってしまいます。誰も火中の栗は拾いません。

簡単な話なんですが、自分達で管理できないものを改善できるわけが無いんですよ!当たり前じゃないですか、そんなことは。仕様書をどんなにしっかり作ったとしても、実際に動かすプログラムは絶対に変化していきます。変化に即応するためには、プログラムの状態を常時把握しておくしか無いんですよ。だから、プログラムを自分達で書いて内製するしかないんですよ。ITは確かにツールです。ツールからビジネスは作れません。ビジネスが分かってればIT戦略の企画は出来るかもしれません。でも、戦術が無いから崩壊する。ツールの使い方は経験して、良い面も悪い面も体験しなければわからないんですよ。頭だけで理解できるわけがない。

経営とITの溝を埋めるたった一つの方法とは

情報システムを進化させることへなかなか手が回らない。多かれ少なかれ、こうしたジレンマってどの会社さんでもお持ちなんですね。でも、あまりにも溝が深すぎて、進化させるための「はじめの1歩」の歩幅が広すぎるんです。橋のかかっていない崖を飛び越えるような感覚になっちゃってるんです。それが経営とITの乖離の一因です。

乖離を埋めるには、どういう手段を取るにせよ「自社のシステムがどのようにエンドユーザーに、大きくいえば経営に貢献しているのか」を感じられるようにならなくてはならない。システムに関する主導権をベンダーからユーザー側に寄せていくしかないんです。それを成し遂げる方法はたった1つ。システムを自分たちの手で進化させることによってのみ、達成されるんです。

逆に言えば、自分で手が出せないシステムは改善しても穴埋めにしかならず、結局ベンダー主導のつまらない再構築になって無駄な金が出るんですよ。それがわからないで、引っ込みが付く付かないと言う面子ばかり気にしているから、動かないコンピュータは量産されるんですよ。そんなもんより、現場の方がExcelで作ったマクロプログラムのほうがよっぽど役に立ちます。東証アローズの事例のように、滅茶苦茶ミッションクリティカルなシステムでも、自分達で管理できれば動くコンピュータになります。問題を解決可能なサイズまで分割して、頭から足下までかみ砕けるかどうかなんですよ。

変化しない業務など有り得ない

業務が進化していけばやるべきこともやりたいことも変わっていきます。それを全員が理解する必要はない。でも、会社の手足になっているシステムを理解している人たちが全体最適を考えて行動に移せないと、ビジネスの求めるスピードに対応するのは難しいです。システムが分かっている人たちがいれば、改善したものが改悪だったとしても、スピードが速いから元に戻せますし、次の手が打てます。スピードがあれば、多少のズレは吸収できます。ユーザー目線で見た、アジャイルのキモはここだと思います。

業務プロセス全体を回すためのシステムでベストなソリューションを求めるなら、内製するしかないんです。部分的なものはパッケージでも何でも使えばいい。勤怠管理とか、資産管理とか、給与計算とか。ここを起点にして問題が起こっても、それは事業には影響がないしデータを共有することも少ないから、スコープが狭い。でも、事業の進化を促すシステムを求めるのなら、会社によって事業内容は異なるし競争力を生み出す源泉も違うから、ありきたりの既製服を着せても綻びが出るんですよ。個体差があるんです。オーダーメイドで袖を通すしかないんです。

リスクが分からないことほど怖いモノはない

プログラムの稼働状況が把握できないことで引き起こされる最大の弊害は、リスクが何か分からないことです。全てを1からプログラミングする必要はないというのは、いざとなれば内製できる人間が言うセリフです。そういう力を持っていない限り、委託先の企業の仕事ぶりを管理することは出来ないでしょう。リスクが何かを理解できれば、どんな組織も飛べるんですよ。飛んだ先が崖じゃないってことが分かれば。その先に内製と外注の区切りを明確にできるという、大きなメリットがあります。ここまで言って初めて管理できている、と言えるでしょう。払う必然性のない対価を払っている以上、ダメなんですよ。自分たちで負うべきリスクも明確だから、自分たちが成し遂げたことが何なのかも感じられるようになるんです。Nothing Venture, Nothing Haveとはよく言ったもんですね。

経営者の方にお伝えしたいこと

事業に対するシステム導入やIT化については、遠くのベンダーに頼むより、近所のプログラマに聞いて下さい。「こういうのを作りたい、こんな問題を解決したいんだけど、どう思う?」と気軽に聞けるプログラマーの存在が、きっとお役に立ちます。情報収集をして議論をたくさんして欲しいです。大切なことはそんなに多くはないですし。出来ることと出来ないことの境目が明確になるので、戦略も練りやすくなります。システムを作るのに必要なコトをわかっていくには、システムを作る人の言葉にちょっと関心を持って、それなぁに?と素直に聞いて欲しいなぁと思います。