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GoTheDistance

クオリティスタートという会社をやっている人のブログです。中小企業の顧問エンジニアをやっています。

富士通の3万人SE職務転換大作戦は成功するのか?

全文は紙面でないと読めないのが残念ですが、非常に気になるニュースが飛び込んできました。

富士通、余剰SE変身作戦
富士通がグループで抱える約3万人のシステムエンジニア(SE)の大がかりな職務転換に乗り出した。一つのシステムを複数の企業などが利用するクラウドサービスがこのまま普及すれば、顧客の要望を聞いて個別システムを作り込むSEは仕事がなくなり、余剰人員問題が顕在化するからだ。野副州旦元社長の急進的な改革路線を修正した富士通はSE余剰問題で軟着陸を目指すが、クラウドの奔流にのみ込まれる危うさもはらむ。

富士通、余剰SE変身作戦

実は富士通グループさんには弊ブログを頻繁にご覧頂いておりまして、企業ドメインの中では最もアクセスの多いドメインであります。クロールしにきているのかなと思うぐらい。ブログで言及している「なんでもかんでも受託開発では、もうSIビジネスで成長することは出来ない」という危機感がついに経営陣にまで到達したのかと、勝手に感慨に耽っております。何にせよ舵を切ったのは評価すべきことです。

この記事の骨子であろう「クラウドサービスがこのまま普及すれば、顧客の要望を聞いて個別システムを作り込むSEは仕事がなくなる」の意味は、2年ぐらい前から何度も申し上げていることですが人月積み上げの価格設定では明日から使えますよというSaaS,PaaSのビジネスモデルには太刀打ちできない、という文脈でしょう。Salesforce導入なら月10万、オーダーメイドで作ったら500万+運用費。ここを天秤にかけたら、どっちに軍配があがるのは明らかです。顧客はもう、構築費にはお金を払わなくなっている。

業務がパッケージとフィットすればそいつをそのまま突っ込んだ方が速いし安いことが多いんですが、手間をかけたほうが人月では儲かる。つまり、パッケージを担ぐより受託開発をやった方が基本的には儲かる。工数かけたほうが儲かるんだから作り込みにいくぜ、そうすれば下請けにも出せるだけの金額出せるし的な人月の負の側面がありまして。ここに絶望する人多いです。この職務転換からは、人月の負の側面を活かしたビジネスでは3万人の従業員を食わせることが出来ないと解釈することも出来ますので、実はグッドニュースかもしれません。

前ふりはこの辺にしておきまして、ホントの焦点は「個別構築はあかんならクラウドだという単純バカな理屈をどこまで練り込んでいるのか」です。個別システムの作り込みからクラウドサービスの提供への職務を行える人材を作るとのことですが、クラウドを活用して受託開発で成長するんです人月はそのままで的転換だったら、絶対失敗するでしょう。受託開発のPDCAサイクルのスピードを高速にしてクラウドサービスに対抗するのは戦略としてはアリですが、今までよりもディープに顧客の要望を聞き出してそれをソフトウェア上に設計して実装できる人材でなければ破綻します。要望からシステム機能まで瞬時にドリルダウンできないと、スピードは上がらない。今までそのスピードを必要としなかったビジネスで生きてきたSEを、再教育したからといってジョブチェンジできるとは、私には思えません。クラウドって言いたいだけなんじゃないのと揶揄されるレベルでは話にならない。

富士通グループぐらいの大きな会社さんなら、様々なビジネス課題を解決できるソリューションを多数お持ちのはず。それらを人月でヒョウタンツギにしていたパッケージやソリューションを解体して、OSSベースで焼き直してWebで複数のビジネス課題を解決できる運用を含めた新サービスを作るという方向のほうが面白いと思うんですが。職務転換の前にビジネスモデルの転換が先じゃねっていう気がすごくするんですが、3万人抱えていると抜本的な改革は難しいですよね。余剰SEの真因が人月単価への依存だとすれば、ね。

富士通グループが職務転換によって新しいSIの形をどのように作り上げていくのか、業界の先を展望する意味でも楽しみです。

追記(2012/01/23 23:40)

富士通グループの職務転換を示唆している記事がネットにあったのを見つけました。

「まず、顧客の現状を把握・分析する技能を持つフィールド・イノベータが伺い、そこから出てきた課題の解決策をコンサルタントが提案し、その解決策の実現手段をサービスインテグレータが顧客とともに考えて具現化していく。ビジネスプロデューサは文字通り、案件ごとのビジネスをプロデュースする役割を担う」

Weekly Memo:富士通が説くSIにおける人材革新のツボ - ITmedia エンタープライズ

僕が指摘した「受託開発時代の体制はそのままでクラウド担ぎます」という負けパターンのようにしか見えず、大変残念です。この体制を捨てなければ意味がない。人が介在するコストを減らしていく努力が全くこのインタビューからは窺い知れず、3万人いる上級SE(?)を受託開発から自社のなんかよくわからないクラウド的なサービスをみんなで担ぐ体制に焼き直しました以上の意図がこの記事からは読み取れないです。

冒頭の「スキルからロールへのシフト」と書いている一文も全く意味不明で提灯記事もここまで来たかというレベルなんですが、今の人材の保有スキルがマネジメント的な能力しかないので小回りが全く効かないので、もうそこは諦めてクラウドっていう印籠を使って役割だけ挿げ替えてオワコンを延命させようという考えなんでしょうかね・・・。無理だって、それは。2年後にハッキリすると思うけど。

この記事が全てではないと思いますが、現状「変える」ということだけが先走りしており、変革の内容に革新性が全く見受けられないのがとっても残念です。