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ござ先輩と言われています。(株) クオリティスタートという会社をやっています。

【書評】お金をドブに捨てないシステム開発の教科書

技術評論社、傅さんよりご恵投頂きました。

本書は公認会計士でありながらシステムコンサルタントをされている中川さんが、システム構想づくりの重要性をじっくりと説く一冊になっています。そう簡単に出来ることではないので「経営・会計・業務・システム」の4つの視点に分けて考えるべきと説いております。詳しい目次はこちらの著者の方の会計事務所のWebサイトにあります。

nakagawa-cpa.jp

本書で挙げられているメッセージは僕の中で違和感が多かったので、書評の内容も「なんでそういう説明になるのかな」という話が中心となります。

構想づくりの大切さを説く「なぜ」が弱すぎる

僕が感じた、本書の最大の不満がこれです。20pの1ページしか、何故システム構想が大切なのかが書かれておりません。システム構想づくりの大切さを説く本のはずなのに、「経営者の決意の重さをこめろ」とか「何故システム構想が難しいのか→ビジネスが多様化しているから」という論理展開は雑です。教科書と謳う以上は、もっと詰めて説明して欲しい。

例えば、経営者の決意をどれだけ込めようが、しょうもない設計書からはしょうもないシステムが出来るので絶対に辞めろ。これが教科書に書くべきことですよ。マジで。

4つの視点を集約しましょうという構成ですが、一読してもう一度頭から読み返すと一体何が大切だったんだっけかなぁとわからなくなりました。視点を切り替えて語ることは必要なことですが、構想を語る為の最終的なドキュメントは下記の構成物で構成され、こういう手順でしっかり詰めましょう、という構成が良かったんじゃないかなぁと思います。会計システムと販売管理システムでは検討事項が異なりますが、本書ではそれを包括的に教科書としてまとめようと腐心されたのでしょうけど、システム開発暗黙知が多いので大変難しいことだと改めて感じた次第です。

僕が考えるITでお金をドブに捨てない方法

この3つだけ、最低限考えましょう。

  • 経営者の思いは適当に受け流せ。
  • 自分の仕事の判断基準を全て書き下ろし、ボトルネックを潰せ。
  • いきなり作るな。ASPで代替出来ないかを常に検討しろ。

経営者の思い。重要ですよね。プロジェクトの本気度を図る指標としては有用ですが、システム構想には不要なこともあります思いが間違ってることも多いです。僕は自社で内製しましたが、経営者の思いを全く汲んでおりません。聞くだけ無駄でした。やりたい事とやらなくちゃいけない事は、全く別なんです。詳しくは下記をご覧ください。

gothedistance.hatenadiary.jp

業務の洗い出しが重要だ〜とよく言いますが、その8割ぐらいは「で、あなたはその仕事を終える為にどんなことを判断してるの」で説明ができます。判断基準がわかれば、完了基準も例外となることもわかります。そうすれば、業務担当者のボトルネックを見つけてその原因となる構造がどうなっているのか、議論ができます。まずはここを潰さなければ。使う人に使う意味がなければならず、その意味が経営に資するかどうかは、また一つ上の議論です。

ボトルネックの兆候としては、ミスが多い・確認が多い... など。ボトルネックになるのは個人の問題ではなく、組織運営の問題です。その問題が生まれてしまう構造をAs-Isを分析しましょう。その精度が低いと、どうしようもないToBeが出てきてしまいます。新規事業等でAsIsが存在しない場合はToBeから描くしか無いので、余計に難しくなります。

で、最後に。構想を練って業務プロセスを描いて、こういうオペレーションが出来れば改革ができるという段階になって、次に検討すべきはASP等のサービスの活用です。出来合いのもので済ませることが出来るのか出来ないのかを、じっくり吟味する必要があります。昨日の記事で「プラント型ITの構築は企業競争力の優劣の鍵」と書きましたが、中小企業においてはいくらその部分を強化しても無駄なので月3000円払って借りてくるのが最適解であるケースもあります。最終的に業務と業務を繋ぐ血管を作るためにプラント型ITが必要になるとは思いますが、まだその段階まで至っていないケースもありますから。特に新規性が高い業務の場合は。

みなさんのシステム開発が実り多きものであることを祈ります。

SQLを学習できるWebサービスを作りました。