こんなに美味しいネタをPOSTしてくれてありがとうございます。@ITさん。
日本語を話せていない重鎮様
ネガティブイメージを突きつけられた浜口氏は、「必ずしも全員が3Kではない」と反論。岡本氏も「3Kの“帰れない”は、帰りたくない人が帰れないだけ。スケジュール管理の問題だ。
帰りたくない人が帰れないって日本語おかしいんですが。帰りたくない人が帰らないの意味だとしても、そりゃスケジュール管理の問題なわけが無い。すんごく好意的に解釈すると「個々人のスケジュール管理がダメだから帰れないだけだ。この仕事特有のものではない。」という意味だろうけど、多くの場合は見積りの問題。1時間で東京から大阪までチャリで行って来いという話が現実に起きているわけで。破綻しているスケジュールに管理もクソもない。こんな詭弁じゃ誰も納得できないって。本気で言っているのならこりゃ重症だな。ヒドス。
理想と現実
IT、特にソフトウェア開発は、頭脳とサーバとオフィスがあればよく、投入する物的資源が少なくて済む。あとは頭の勝負。そういう産業構造だから若い人の活躍の場が非常にある。
理想はこの通りであろうが、現実には「そういう産業構造が貴方たちのおかげで歪んでしまって、若い人が搾取される場が非常にある」だろう。物的資源が少なくて済むってことは人が資本。これを悪用すると人が商品化される。つまり、売り飛ばされる。悲しいかな、人間様ほど売り飛ばしたら確実に儲かるものも無い。
学生さんは賢い
学生の1人は「コミュニケーション能力の重要性は、就職活動をしているとどこの業種でもいわれること。だが、例えば、ドキュメント化能力のようにIT業界に限って必要な能力とは具体的に何か」と質問した。
コミュニケーション能力ほど一語多義的な言葉は無い。いろんな意味でコミュニケーション能力という言葉は使われるが、個人的には「お客さんのおかれている立場・力関係を把握し、自分が望む方向にプロジェクトを導いていく能力」だと思います。横文字は使い方に気をつけましょう。
人材育成の件
「プログラミングは入社後にトレーニングすれば問題ない。SIerの業務の中では、いろいろな役割の人が連携して仕事をしている。みんながプログラムを書いている訳ではないので、入社後のトレーニングで適正がないと分かれば、プログラミングをあまり必要としない仕事をやってもらうこともできる」というような回答だった。僕は、この話を「とりあえず会話ができそうな人をたくさん採用するので、そいつらを鍛えてみて、使えるやつだけ残していくよ」というような意味合いに取ったのだけど、本当のところはどうなのだろう。
これはですな、直接業務としてプログラミングをしなくても他に食える道はありますよ、ぐらいでとっておくとよい。大きな会社ゆえに色んなエンジニア像が描ける環境があるだろうし、営業やプリセールスとして活躍することも出来ますよという教科書的な回答。でも、そこまで多様なパスを用意できるんだっけっていう問題は残る。
あー、あとね最近は理系だけでなく文系の採用も増えてきていているのも実情で、プログラミングが出来ないってことにコンプレックスを抱かれている学生さんをいかに採用競争の激しいこの業界に興味を持って頂くか、というのも大事なんですよ。プログラミングありきで採用し始めたら、採用予定人数を余裕で下回ってしまう。この辺はあんまり深く考えないで。マーケティングの話だから。
使えるやつだけ残すというのは言い過ぎなように思えるが、そりゃどの世界でも使えるやつは重宝される。新人さんなんてキャッシュ面からすれば金食い虫でしかないのだが、下手な中途を取るより色々意味がある。そんだけのこと。で、話は飛ぶが、プログラミングはこの業界において全ての基本だと思う。インフラやネットワークのエンジニアにとっても、プログラミングが出来る人とそうで無い人には何かしらの違いが生まれると思う。
TISやデータさんのような大きなSIerにとって、一番必要なものは政治力です。大きな案件を回さないと食えないから。大きな案件の場合は、プロマネがプログラミングできても大して意味は無い。それよりもお客さんであったりチームリーダーであったり、そういった方々を如何にプロジェクトとして正しい方向に動かすかが一番求められる。図体がでかいから、一歩の歩幅もでかい。当然のように引き返すのも大変。狂牛病の牛のようになってしまった案件、いっぱいありますよ。
コレに対して小さな案件の場合は、プロマネがいざとなればプログラミングも設計も出来ることが求められる。自分のケツは自分で拭くことが求められるし、規模が小さければ会社としても「出来る限り自分でつぶせ」という方向に行くし、自分が頑張ればなんとでもなる範囲だろって言われると思う。
今のようなとにかく人を集めないとプロジェクトが進まないよ、そして人が少ないと売上もたたねぇよスキームは、悪い方向に行くと優秀な技術者をひたすら潰す方向に行ってしまうことは確かです。
製造業的にライン組む必要はねぇよ
「Googleの開発と日本のカスタムメイドなシステムを作るSIerの開発は違うもの。Googleはスモールチームで仕上げるが、日本は製造業的にラインを組んで仕上げるため、いろんな人材が必要になる。」とのこと。単に効率の悪いシステム開発をしているということではないかと思ったのだが、どうなのでしょう。
これは伊藤さんのおっしゃるとおり。そもそも、ラインを組む必要なんて無い。必要は無いとは言いすぎかもしれないけど、必然性はどこにもない。37SignalsのCEOのJason Friedは、Webベースのサービスを作るのに必要なのはプログラマ、デザイナ、スイーパーの3人で十分だといっていた。スイーパーというのはプログラミングと仕様の間を行ったりきたり出来る人の意らしい。詳しくは Less is More -- 身軽なことはいいことだで紹介されているスピーチをどうぞ。
結局、そういう風なやり方をしていると技術の新陳代謝に組織が付いていけず、かといって良くも悪くも人材を入れ変えるのが社会的に厳しい日本では、ユーザー企業が必要とする技術は変わるのに俊敏に技術者を入れ替えられないことが問題となり、「あたまのかたいおやぢ」が量産されてしまうのが現状だろう。*1
まとめ
以前ブクマコメントで頂いた「エンジニアの価値を正しく活かせるスキームではなく、エンジニアをダメにする、ダメエンジニアを集めて仕事が回るスキームになっている」というご指摘が、全てを物語ると思う。
かといってあれよ、SI業界でもプログラミングできないヤツは基本的に肩身が狭いですよ。基本なんだから。だけど、圧倒的に飛びぬけたプログラミングスキルは必要条件じゃない。そういう方は「IT業界」に行かれたほうが活躍の場をゲットできると思います。SI業界では、あるに越したことが無いレベルなのが実情ですから。泥臭い地味な業界なんで。
*1:http://d.hatena.ne.jp/mkusunok/20070926/liqより