これだよ、諸君。私が悶々と抱いていた転職コンサルなる斡旋業者に抱いていた嫌悪感は。
非常に面白いコラムなので、是非全文を読まれることをお勧めします。このエントリでは随所に引用しつつポイントをメモ。
中国へのオフショアが失敗するのは何故か
この10年間、特に日本のSIerは中国へのオフショア開発に取り組んでいました。理工およびコンピュータをちゃんと専攻しており日本の半分以下の単価で優秀な技術者がいるからである、という理屈で。だけど実際にはブリッジSEなるスーパーマン的なSEがいなければ、オフショア開発の成功率はグンと下がってしまっている。これはどうしたことか、と。
それは中国の社会構造によるものではないかと、このコラムの筆者である四倉氏は語っております。
中国で一流大学を出てIQの高い技術者がどうして一流のSEになれないかというと、金のために会社を移動する人が極めて多いからである。米国も同じで、それでは一流の技術者には育たない。SEの一流の技術者というのは、単独で育つことは難しいので指導する師匠も重要である。そういうギルド社会は継続的な雇用からしか生まれないのである。何故未だに中国にブリッジSEが必要かといえば、それは言葉の問題というよりも、優秀なSEが育ちにくい社会構造の問題なのではないかと筆者は思っている。
「IQの高い技術者≠一流のSE」という式に注意が必要。
また、そもそも中国の価格優位は中国元が圧倒的に安いという中国の価格政策の賜物の結果でもある、ともおっしゃられてます。
転職は麻薬
随所に刺激的な記述が。
例えば、20代〜30代で2回転職すると、まずSEとしては使いものにならなくなる。(中略) その人間のスキルを正確に判定するのに2年くらいかかってしまって、それから再教育するとキャリアは2〜3年自動的にロストするのである。それを10年の間に2回やると6年分のキャリアをロストすることになる。しかも、スキルの継続性は全く保証されないので、まず一流になるのは難しい。
や、
最近では「1人で3度おいしい」と言う悪いエージェントもいて、1人の人間を同じエージェントが3年サイクルで3回転職させて500万→600万→800万と給与を吊り上げ、エージェントはその間に150万+180万+240万=570万のフィーを手にして、当人はスキルダウンし続けているにもかかわらず3年間で300万も年収がUpするというハッピーなトレードが実現するのである。
とか、
肝心の3年で給与が大幅にUpした当人は典型的にどうなるかというと、まず、責任感や義務感や使命感がないので、部下の人望はない。従って通常の管理職としては通用しない。このくらい転職するとスキルは殆ど素人なので通常の設計はまずできない。スキルがないから部下の指導育成もまず不可能である。
不釣合いな給与とスキルのアンバランスのために会社にいられなくなり、40を過ぎると転職のサイクルを2年→1.5年→1年→半年と短く繰り返しながら坂を転がり続けるのである。こういう転職ジプシーはIT業界にゴマンと存在する。
恐ろしい話ですが、目をそむけてはいけない現実だと思います。
ゆえに、
転職は麻薬と似ている。両方ともやってはいけないと思いつつ、短絡的な利のためについついやってしまうのである。麻薬は現実の厳しさを忘れ、すぐにハイになれるし、転職も現実の厳しい仕事から解放されてなおかつ給与がUpするのである。
これはわかっちゃいるけどやめられない。
という結論に至る。
もちろん転職が悪であるとは口が裂けてもいえない。転職がクセになってはいけないということ。それが重要。