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ござ先輩と言われています。(株) クオリティスタートという会社をやっています。

【書評】その「エンジニア採用」が不幸を生む

毎度おなじみ技術評論社の傅さんからご恵投頂きました。

結論から先に言いますと、僕が今までご恵投頂いたエンジニアのキャリア本で「ベスト」の一冊です。

採用という切り口でエンジニアのキャリアを見つめ直す

本書は「採用」に絞って、エンジニアが企業組織で良いキャリアを築くためには何が必要なのかを問題提起しています。「エンジニアはもっと採用されるように頑張れ」というクソみたいな話じゃなく、採用すると決めた経営陣、それに従う人事担当者、採用されるエンジニア。この3者の立場を俯瞰しつつ採用コンサルティングとして携わってきた筆者が、重厚な論調で痛快に問題点を指摘しています。

エンジニアで生きていくのと、エンジニアを活かす企業組織を作ることは、すごく難しいことはでないか。それが本書の隠れたメッセージのように感じます。

人材紹介会社のビジネスモデルがエンジニアを不幸にする

自社で集めるのが難しいから人材紹介会社を活用するわけですが、向こうも商売です。マッチングゼロだったらお前何やってんのって話になるし、転職しても3ヶ月未満で退職した場合はノーギャラになるケースもあるそうです。技術要素や担当工程が細分化されているエンジニアの事情を鑑みれば、まずマッチするケースが少ない。でこかアンマッチする案件を紹介せざるを得なくなる。その結果、雇用して退職された場合はアンマッチになった理由を検証するのが困難になって、また同じことが繰り返される… そんなことが書いてあります。なかなか、難しい話です。

良いエンジニアを採用できる採用担当者を

不幸なすれ違いを防ぐ為にどうしたらいいか。ド正論は、その企業のエンジニア採用力を上げることです。良いご縁があっても、採用の質が悪ければ意味がない。

エンジニア採用の難しい点は、エンジニアの評価はエンジニアにしか出来ないことにあるのではないでしょうか。数値化出来る要素があまりない上に、経歴ではなく姿勢が問われることが多い。C#の職務経験はないけどAndroidアプリを作れる人だしUnityも慣れたらいけるよね、みたいな判断は素人にはできない。職務経験の向こう側がね、なかなかね。

また、エンジニアはキャリアチェンジをするのが滅茶苦茶難しい。陸に上がった魚は海には戻れない的な。エンジニアを人事にして2〜3年採用業務をやったら、もう開発の現場には戻れない気がします。それを望むエンジニアの方、どれだけいます? 一般的な人事部門と全く違うあり方が望ましい気がしますし、エンジニアに限らず様々な知的労働者に応用が効きそうです。

ある企業では、エンジニアを採用する時にそのチームのエンジニア全員が採用面接に関わると聴きました。満場一致じゃないとだめらしいです。一歩間違えれば圧迫面接でしょうけど、採用はお互いの真剣勝負と考えている現れですね。

デブサミで「採用」をテーマにしたら面白いかも

次回のデブサミ、どこかのトラックで採用をテーマにしたら面白い気がします。採用で苦労していない組織はないと思うので。取る側がこんなエンジニアがほしいじゃなくて、ウチはこんな人事制度や評価制度でエンジニア像を考えています、という立ち位置で。すでにやっていたらごめんなさい。

技術や工夫を駆使してサービス作った/現場を変えたという話にもう1枚加えるとしたら、キャリアだと思う。エンジニアの祭典で優れた見本市の場として十二分に機能し、エンジニアやってる意味を見つめ直す場にもなっている。同時に、どんな技術を身に着けたら良いかでは語れることに限りがある。社内制度に踏み込んでしまうので「どこまで」という線引きが難しいですが、人事制度まで切り込んで採用に議論する場があれば業界としてプラスに働くように思います。

不幸なすれ違いをなくすために

エンジニア採用が活発になったのは恐らくここ10年のことですから、ITエンジニアのキャリアや採用のあり方にについては黎明期なのかもしれません。試行錯誤が続くと思いますが、現時点でITエンジニアの採用についてまとまって書いてある書籍は本書ぐらいでしょう。自分がどう評価されたいのか、自社の評価軸はどこにおくのか。採用する側は何を気をつけたらいいのか。

本書をあたれば、きっと新しい発見があることでしょう。