はぶさんの日記にわが意を得たりという記述があったので、脊髄反射TB。
エンジニアはともすれば「正しさ」を追求します。他者に対する説明も、いかにそれが正しいかという観点で話をします。ですが正しいだけで他人の心に対して鈍感であっては、決して魅力的な存在にはなれないと私は感じます。
私はいわゆる「スーツ」という立場に立ってクライアントの所に向かいますが、まだまだこの「正しさ至上主義」から脱することが出来ません。コンサルタントというのも、エンジニアと同様に「如何にそれが正しいか」という観点で話をするのが基本です。御社にはこれが必要なんです、こうすべきなんです。その情熱をPowerpointを武器に伝えていく。正しさを追求することはエンジニアもコンサルタントも同じなのですが、その正しさがクライアントの「コンテキスト」に沿っていない場合が問題です。単なる押し売りになってしまいます。理屈の上で正しいことと、クライアントにとって正しいことは、似て非なるものです。
正しさを前面に出したメッセージは、裏返すとものすごく単調なクリシェになってしまう。
僕も根っこは技術者なので、「それはこういう構造になっていますから、これをこうするとこうなってしまいますので、こういう結果になります。なので、XXするのが最善です。」というトークが多くなりがち。これはエンジニアとしては正しいが、仕事を受注するという観点ではマイナス。クライアントの価値観を無視してしまうような正しさが前に出てしまう。これはこれで真っ当で正しいのですが、かなり単調な語り口になって、魅力が伝わらない。
私の叔父は筋金入りの凄腕営業マンで同時に会社を経営しているのですが、最近この「正しさ至上主義」についてダメ出しされています。
彼が言うには、営業というのは商材を良く知らなくても出来るそうです。商材について詳しく知っている専門家が営業が出来ることにはならねーだろ、って。正しいかどうかよりも、クライアントにどう納得してもらうのが先で、まず自分を買ってもらう。その次に、自分たちと取引しない理由を1つ1つ解いていけばいい。お前が独立を考えているならそういう所を徹底的に鍛えないと会社潰しかねんぞ。そういうアドバイスを頂いている。頭ではわかるのだが、体で反応できないのが最近の一番の悩み。
端的に言えばお客様のお困りごとやお悩みごとに対してあまりにも無関心なのではないかと感じるのです。エンジニアとしての技術的な興味や自分自身の仕事と生活のバランスなど、つまりは内向きの関心しか持つことが出来ずにいるように感じるのです。
(中略)
最近私はあえて同業から距離を置くようにしています。ネットで見る情報なども同業のものは見ないようにしています。その代わりに違う世界の方々と実際にお話をすることで、私たちの仕事に期待されていることを知り、私たちが提供できる価値の魅力を同業のような専門知識のない方に対してもお伝えできるように工夫をしはじめています。
エンジニアである以上常に良いものをサプライしたい、常にコードを書いていたい。そういった願望がありますので、様々な技術情報を収集をしていく。技術的な興味を中心においてしまうと視線が内向きになってしまう。その弊害をはぶさんは指摘されていますが、これはSI業界の多重下請け構造にも一因があります。クライアントの顔が見えないポジションで仕事をしているケースが非常に多いのです。クライアントの困りごとを聞ける環境になかったら、どうしようもないということ。これは大きな問題です。なんにせよ、営業が出来るエンジニアはマジで最強です。そういう視点を持つと自分の望む仕事が獲得できる可能性も高くなると思う。
良いものをサプライすることと、良いものであると価値を説明し納得してもらうことは、全く別物。私はビジネスプランを武器に後者が出来るようになりたいと思っています。