GoTheDistance

ござ先輩と言われています。(株) クオリティスタートという会社をやっています。

大きな会社と小さな会社のどっちで働くべきか迷っている人へ

いきなりポイントから入ります。大企業で働くことと中小企業で働くことの違いは、大企業はルールで動き中小は経営者の恣意で動くということです。ココがすごい重要です。

僕は6年近く大企業にいました。その時に考えたことは大企業で働くということ - GoTheDistanceで書きましたが、大企業の根本的な原理原則はルールで仕事が動くということです。異なる立場・異なるレイヤーの人たちを束ねて1つのサイクルを作るには、ルールを作ってその中でサイクルを回すより他ありません。それの累積によって企業文化なるものが形成されます。

大企業にいてよかったことは「普通に仕事をさせてもらえる」ことでした。もちろん仕事を選ぶことは基本的に出来ないんですが、明確に自分の役割が与えられ、そのロールに従いすべきことをして、あるべき成果を出してその仕事を終える。あっちいったりこっちいったりということはない。いきなり全く次元の違う仕事を求められたりはしない。そして次へ行く。そういう環境があったのはキャリア形成という意味でとても有益だったと思いますし、そこで成果が出せれば居心地も悪くないです。腰をすえて働けるのは大きなメリットです。もちろん自己PRは常に必要です。最近はキャリアパスなんてもんは幻想のレールでしかないと思っているけど、会社で普通に変なインタラプトがなく仕事が出来るってのは、恵まれていると思います。

ルールで動くことの悪い面は組織の硬直化・官僚化に伴い「個」が透明になっていくことです。ルールが入るということは、何をするにもどうしても意思決定が遅くなります。ルールがあるってことは、個人としての名前、理念、価値観で仕事することは「掟破り」になりますので、基本的にご法度になります。個人が透明化すると求められるのは何かといえば、「How」に注力できるかどうかになります。Howに注力できるってことは裏返すと、替わりはいくらでもいるってコトです。それが大企業の強さです。

一方の中小企業、特に僕のような数名しか社員がおらず社長とマンツーでやっているような会社にいる場合は、ルールもクソもありません。経営者が右といえば右ですし、左といえば左です。その濃度が大企業と違います。大企業にいたら今までは仕事が与えられていましたが、今は仕事そのものを作り出さなければならないためお客様に価値を提供できるか否かだけが厳しく求められ、僕はしばしば「なんでこんなことまでやらなきゃならないんだろ」という葛藤がやってきました。

僕が一番最初に直面したのはこのマインドチェンジの必要性でした。

特に僕はコンセプトを練ってモノ作りをしていく側の人間ですから、その時重要なのは出し惜しみをしないってことです。出し惜しんだらやってくるチャンスもやってこなくなるし、新しい何かを提供していくのであれば常に前を走っていなければならないからです。

「右といえば右、左といえば左」のくだりで「YESマン」を思い浮かべるのはいささか浅薄です。求められるのは「Disagree and Commit」の精神です。議論はするし間違ったことがあるなら伝えるのですが、意思決定者が右と言った中で十分な議論を重ねたら、下にいる人間は賛成ではなくてもコミットして前に進める努力を絶対にしなくてはならない。そうしないと、単純にやっていけないんです。前に進まないんです。大企業は別です。コミットしなくても代わりはいるし、誰かがやってくれます。80点〜90で上等です。100点とっても100点の評価を得られないのが大企業でもあります。特筆した成果を上げても90点が91点になるような世界ですし、基本的には最低限を下回らなければOKという世界です。中小ではそんな余裕はどこにもありませんし90点未満じゃ0点と一緒ですが、100にも200にも化ける可能性があります。フリーダムな世界です。

小さな会社に飛び込んでいこうとされる場合に心に留めておいて頂きたいのは、id:hase0831さんのお言葉を借りると「この社長のために(自分に非がなくても)土下座できるか?」という質問にどう答えるかです。それぐらいの気持ちがなければ、経営者の距離が近い中小では朝令暮改は当たり前ですからルールで考えていたら不条理なことが多くなるので疲れてしまって、やっていけなくなるんじゃないかなと思います。中小で疲れて大きな会社で仕事をしたいという方の気持ちがよくわかるようになりました。

大企業→ベンチャーへの移動が少ない理由

基本的に「大企業→ベンチャー」と「ベンチャー→大企業」なら前者のほうがやりやすいです。

「90点以上を出せるような人たち」が、なぜ、
1点、2点の差を争わざるを得ない大企業にとどまり、
90点以上を出せること自体が評価される中小企業・ベンチャーに来ないのか。

「90点以上を出せるような人たち」をいかに大企業からベンチャーに移すか|Chances for everyone, everywhere (RareJob CEOの日記)

中小に飛び込まない理由は、Whatを突き進むインセンティブのない世界に慣れすぎてしまったからだと思います。「90点以上を出す」ことがどーゆーことか、体で知る機会がほとんどない。

でも僕が転職を最初に考えたきっかけは「1点、2点の差を争わざるを得ない」という大企業の大きな負の側面が耐えられなかったからです。

大企業はどうしても順番待ちがありますし、こんな不透明で何が次にやってくるかわからない、企業自体も短命化しているような時代に自分の腕を磨く機会が常に限定的だったら終わっちまうだろという危機感を感じていたからです。もっと面白いことが出来るはずだと思って飛び出しましたが、マインドチェンジを根本的にしていかないと前に進まないことばかりで色んなトコにアタマをぶつけながら、3歩進んで2.5歩下がる日々です。

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