ITを活用した経営戦略を考える上で非常に示唆に富むエントリだったので、ご紹介。2回は読もう。じっくり読もう。
http://www.searchengineoptimization.jp/for-local-web-design-company-to-survive
これはWebサイトを業務システムに置換しても、全く同じことが言えます。頭の痛い問題です。
使い手と作り手の溝について
下記の記述に危機感を持てるかどうかで話は全く変わります。恐らく、一度でも自分で仕事を請けてWeb制作したことがあればすごく身につまされることでしょう。
熱心にウェブの活用に取り組んでいる地方の中小企業は数多く、全国津々浦々まで無数に偏在しています。その彼らが、一様に困っていることがあります。それは「相談相手になってくれる専門家が近くにいない」ということです。
(中略)
ウェブ制作会社ならお近くにもあるでしょう。そちらに相談されてみたらいかがですか?」と。そして返ってきた答えに僕は衝撃を受けました。その答えとは次のようなものです。
「繁盛店運営のコツを大工さんに相談する人がいますか? 私はサイトの活用で困っているのであって、制作で困っているのではありません。それに日々の修正なら私自身でやりますし、少し難しいことでも楽天ビジネスで安く早く済ませることができます。」
http://www.searchengineoptimization.jp/for-local-web-design-company-to-survive
この問題は非常に根が深い問題ですので、少し整理してみましょう。
顧客が欲しいものは何かといえば、Webサイトを手に入れることで得られる便益及びその活用法、です。原則として、Webサイトそのものはどこから入手しても構いません。外注しようが内製しようがどっちでもいい。なので、Web屋なんて100均のボールペンほどの価値しかない | webdirectooor!!! [ウェブディレクター]という危機感へとつながります。作るにはそれなりの技術が求められるのですが、求められる課題によってはある一定以上のスキルはドングリの背比べ。
Web制作者が提供できるものは、基本的にはWebサイトそのものだけ。出入りの業者にはWebサイトを利用した事業運営のノウハウをご案内することは出来ません。制作会社が顧客の事業運営を代行できる訳がありませんので、無理ゲーと言えば無理ゲーです。その溝を埋めるべく開発手法やプライシングを変えていこうと頑張っておられる会社さんが多数おられるのですが、Webの制作手法がすごく進化しても、Web制作者が事業戦略を提供していくことは非常に困難です。どんなに車が進化しても車がドライバーに取って代わることはまず出来ないのと同じことなのです。
なので、「ユーザー」と「制作者」の溝を埋める方法って1つしか無いと思います。車を進化させても猫に小判では意味が無いので、(できれば制作者もユーザーも一緒になって)ドライバーを育てるしかない、と。で、ドライバーの育成には内製が最短最適です。乗り方がわからない物を管理するのは困難で、ましてや事業運営を変えて改善していくのはもっと難しい。そもそも、事業を設計していくという考え方を持っている経営者が少ないのだけれども。
ドライバーを育成していく為に
Webを活用して売上を上げていこうとすればするほどWebサイト及びその周辺システムの設計はビジネスモデルの設計と等価になっていきます。ターゲットを決める/集客手法を決める/何を提供するのかを決める/購買方法を決める/納品までのフローを決める・・・といったことを設計しないとITで得られる便益は限定的になるからです。事業の運営方法を決めてから、Webでレバレッジをかける所を見定めていくのがスマートです。
でも、Web制作の素人には「Webでレバレッジをかける所」を見いだすことは出来ても、実際に変化させるのは無理です。なので、制作者が歩み寄ってビジネスモデルを設計できるようになるほうが、素人がプログラマになるよりも絶対簡単。10倍簡単。さっきの例で言えば、ドライバーになるべきなのは制作者です。問題はドライバーになれる環境がほとんど存在しないことで、僕みたいに異業種に飛び込むとかSIだけどWebサービス関係の事業を社内外問わず起こすとかして突然変異的な生まれ変わりをするしかないのが辛い所・・・。
ドライバーが増えていくことでドライビング技術という共通言語を持ってプロの制作者(ドライバー)のすごさを肌で感じられるようになり、最終的にはWin-Winにつながっていくと僕は考えております。
個人的には、ドライバーとなったエンジニアは事業を起こす格好のチャンスが巡ってきていると感じています。自分の作ったモノで自分のことを知ってもらえることが出来るのは、うれしいことですね。内製してつくづく思うのですが、事業の運営をシステムでカバーすることにはキリがありません!簡単な話で、ちゃんと運営していけば改善点が生まれて事業は変化するので常に違ったニーズが生まれてくるからです。
自分が作ったシステムで会社の事業を運営すれば、同業や顧客の悩みがダイレクトに入ってきますので、より強力なパートナーシップを築くことが出来るし、更にはそのシステムを販売することも可能です。顧客との適切なパートナーシップの構築が、一番売上があがるんですよ。何故か。顧客の問題は我々の事業運営の問題に跳ね返ります。それがわかれば、そこを改善してあげれば顧客の事業が回りやすくなるので、大抵売上もあがります。
これからもこういう話はどんどんブログに書いて、事業運営におけるエンジニアの活用について啓蒙していきたいと思います。